入学したばかりの1年のように胸が躍るわけでもなく、3年のように一年間がそれほど貴重になるわけでもない。 2年生になった最初のホームルームは自分の自己紹介が終わった後、当然ながら寝て過ごした。 ――ドゴッ 突然の破壊音に目を覚ますと夕日に照らされた机や椅子に黒板。まるで別世界に入り込んだような、そんな感覚だった。 「うわ、早く帰ろ」 「巻き込まれるとか御免だしね」 「ほんとだよねー」 辺りを見渡すと教室に残っていた面々は蜘蛛の子を散らすように帰っていく。どうやらうちのクラスの壁に机が刺さったらしい。 普通なら泣きたくなるような状況も、ここ来神学園ではちょっとした日常となっていた。 「やだなぁシズちゃん。それ書いたの、俺じゃなくてこの子」 私もまた皆と同じように『巻き込まれませんように』と思いながら再び目を瞑る。そのまま眠気に身を任せようとした私の肩にポン、と誰がの手が乗せられ現実に引き戻された。 『私の大事な睡眠時間を邪魔するのは誰で……え?』 「手前か!あ゛ぁ?」 『ちょ、何ですか!?』 顔を上げると平和島くんのドアップ。慌てて視線を逸らせば肩に乗った白い肌と黒い裾、それを辿るとニヤリ顔の折原くん。 「…………ね?」 『あ、はい』 無言の圧力に思わず返事をしてしまった。(何やってんだ私のバカぁぁあ!) 「おい、人のノートにこんなことしやがってよぉ。覚悟は出来てんだよなぁ?」 ずいっと突き出されたノートには『ばか』だの『あほ』だの『単細胞』と書いてある。 『あのー…すいませんが私、こんなに字きれいじゃな、』 「おや、とぼけるなんて随分と性格が悪いみたいだ」 『……いや、本当ですって。というか全く身に覚えが』 「うるせぇぇえぇええ」 『うぎゃっ』 平和島くんの怒号と共に座っていた椅子が急に抜かれ、おしりが床とご対面。 「ほら。早く逃げないと死んじゃうかもよ?」 なんて折原くんの口から物騒な単語が出てきた気がしたけれど、私は今それどころじゃないんだって! よーい、始め (誰か助けてぇぇえええ) (待ちやがれッ) |