あたたかい陽が燦々と照らす屋上。太陽も何やらご機嫌のようでウキウキとしてくる。そんな場所で私達――自分と折原くんは昼食を食べていた。 『そ、そういえば今日はずいぶん空が青いね』 「ふーん」 『雲が一つもないね』 「へぇー」 絶好調な天気を余所に、いつのまにか定位置になった隣に腰を降ろす彼は、黙々と手に持ったパンを口に入れてゆく。 恐らく「食べる」ではなく「胃に詰め込む」という言葉が似合うであろうその動作。まるで機械のように、ただ淡々とその作業を繰り返すだけ。 『あは、ははは……』 「そうだね」 密かに存在するらしいファンクラブの子たちなら、横顔を見ているだけで満足!な状況だろうけど、生憎私にそんな趣味ない。 一体どうすればいいのかな、この状況は。いい加減胃がキリキリしてきたよ、折原くん。 『あ!飛行機雲だ』 「わあすごいね」 『うわぁ。何その見事なまでの棒読みっぷり』 最初は自分が何かしてしまったのかとも思ったのだが、全く心当たりがなかった。いっそのこと本人に直接聞いてしまった方が楽なのではないかと思うくらいに。 だがしかし相手が悪すぎるのだ。仮に地雷を踏もうものなら、何をされるか分かったもんじゃない。 『お腹いっぱい?』 「うん」 およ、今さりげなく奇跡的に会話が成立したぞ、……ってそうじゃなくて。 もうこうなったら頭ばかり働かせていては仕方がない。ぶっちゃけ考えるのも面倒だ。試しに何か話してみるとしようかな。 『そういえば平和じ、』 そう切り出した途端、折原くんがギロリと一睨み。残念ながらごく一般人、むしろそれ以下かもしれない私が黙るには、これで充分だった。 今なら蛇に睨まれたカエルの気持ちが理解できる。ものすごく怖いですよね分かります。 『えっと、ごめんなさい……』 ポツリと呟くとこちらへ向けていた顔が再び前に戻される。正直ホッとした。 何気なく覗てみるも、折原くんの目には既になんの感情も映っていない。それでも、その瞳の中に何があるのか少しだけ知りたくなった。 複雑なお年頃 (いつもと逆だなー…) (なんか、調子狂う) 早く進めたいのにな。なんでだろう進まないよ。 まあ、思い通りにいかないのが世の中の性……ですよね。そうだよね。そうだもんね、うん。 |