朝から折原くんに付きまとわれ、かなりの体力を消費した私には午前中の3時間だけで限界がきていた。 『……あれ?誰もいない!?』 前の授業で寝ていたのか、顔を上げるとそこには誰一人として残っていなかった。ガラガラになった教室は気味が悪いほどにシーンとしてる。 そういえば次の授業なんだっけ。 「悠木」 突然名前を呼ばれ、予想外の出来事にびっくりしながら声のした方へ視線を向ける。 「次、化学で移動教室だぞ」 『あ、ありがとう!えーっと……同じクラスの……』 せっかく親切にしてもらったにも関わらず、肝心な名前が思い出せない。やっぱ自己紹介のときちゃんと聞いておけばよかったかも。 「俺は門田京平」 『悠木小春です』 「あんた、去年図書委員だったろ?」 『知ってるの?』 「あぁ、真面目に仕事やってる奴なんて悠木くらいだったからな」 『そ、そんなことないよ』 そう言って微笑んだ門田くんの表情に内心驚いた。笑ったところを見たこと無かったから、もっと恐い人かと思ってたのに。 人は見掛けによらないなんて言うけれど、まさにその言葉がぴったりだ。なんか悪いことしちゃったな。 『あの…改めて、よろしくね』 「おう。……あ、あと3分でチャイム鳴るぞ」 『うそ!?』 「それ貸せよ」 『……へ?』 「荷物、持ってやる。早くしないと遅れるから」 申し訳ないと思いつつ、お言葉に甘えて教科書たちを差し出すと、彼は片手で軽々と持ち上げてみせた。 「化学室まで走るぞ」 『う、うん!』 寝起きでまだほんのり意識の覚醒しない私は、門田くんに促さながら慌てて教室を出た。 『門田くん。ありがとう!』 新しいお友達 (……なんでだろう) (すごくまともに見える!) どこまでも男前でオカンなドタチンが大好きです。 やっと出せた…! |