『銀ちゃん』 「んー?」 『私ね、今すごく幸せ』 「……俺も」 お互いの気持ちを伝え合うように繋いだ手はとても温かくて、心が満たされるようで。 それに、それだけで幸せだと言ってくれるお前がとても愛しいと思った。 『私ね、思うんだ。銀ちゃんがいない未来なんて絶対想像できないなー、って』 「あたりめーだろ。ま、想像なんてしたくもねェけど」 『勝手にいなくなったら許さないからね』 「バカなこと言ってんな」 『うるさい。バカって言った方がバカ』 「子供か」 周りの奴らに言えばクサイと笑われるかもしれないけれど、それでも構わない。あくまで俺の感性の問題だ。ひとにとやかく言われるようなモンじゃないと思う。 とにかく、ただ隣にいられるだけでも確かに俺は満足だったんだ。 「なぁ、」 それなのに。本当に、ただそれだけで幸せだったのに。そんな些細なことでさえも俺には贅沢だったのだろうか。 「いなくなるなって言ったの、お前ェじゃねーのかよ」 手を伸ばす。冷たくなった頬にやった自分の指も同じように冷たくて。 白くなめらかな肌、それでいて、どこか力強さを感じさせた彼女の拳は、昨日よりも一回りも二回りも小さく感じられた。 「銀さん、バカだからお前が隣にいない生き方なんて分かんねぇって…」 頬を伝って握った彼女の手に落ちた雫。それを見た俺は、堰を切ったように大声を上げて泣いた。 大切なものが手からこぼれ落ちて壊れるほど悲しいことはない (消えた温もりが) (酷く恋しいと思う) "無条件降伏"様へ提出。 |