※攘夷坂田 いつからか、夕陽を浮かべる空が嫌いになった。 今では彼の目を見ることさえ億劫で仕方ない。そうして私は、知らず知らずの内に彼を遠ざけた。あの目には確かな優しさが灯っていたはずだというのに。 『ねぇ、』 「何だよ」 『……やっぱ何でもない』 「変なやつ」 『お前にだけは言われなくねーよ』 「んだとコラ」 キッとこちらを睨み付けた彼の瞳から即座に目を逸らす。そこにも、赤が浮かんでいた。 今は光こそ失ってはいるものの、戦となれば話は別。それは熱く、炎のように、ごうごうと赤を輝かせるのだ。 「ばーか」 私の心の内を察しているのかいないのか。相変わらず本心は読めないけれど、子供のような悪態をついた彼は何事もなかったみたいにそっと視線を外す。 申し訳無いのと同時に、なんだかくすぐったい気分だった。 『今日も疲れたね』 「おう」 『いっぱい、いっぱい、敵を斬ったよ』 「あぁ。俺もだ」 『いつになったら、終わるのかな』 「……さぁな」 かつて私に生きることの喜びを教えてくれた師はもういないというのに、私の中で穏やかな笑みを浮かべて手を差し伸べる彼が消えてくれない。 この崩れかけた世界で血みどろになってどうして救われようか。私達は何を見て、何を信じてゆけば良い。 『世界が、憎い』 さようなら。何かが堕ちた音を、私は確かに聞いたんだ。 或いは始まり |