▽中学生パロ ぱたと止んだ音に背後を振り返れば、さっきまでゲームに夢中だったはずの燐がこちらをじっと見つめていた。 「なぁ、勉強なんかしてて楽しいのかよ」 『楽しくないわボケ!宿題なんだから、仕方ないでしょ』 「……大変そうだな」 キョトンとこちらを見つめ返す真っ直ぐな瞳。まるで自分には関係無いとでも言いたそうな顔。 ベッドの上でつまらなそうに足をばたつかせるのを見た私は、それはそれは大きな溜息を漏らす。彼の所為で幸せなんてとっくに尽きているかもしれない、そう思った。 『一緒にやろうよ』 「やだ」 『なんで』 「めんどくせェもん」 『燐、ただでさえ成績やばいくせに』 「なっ…!」 なんの躊躇いもなく私がぴしゃりと言い切れば、彼は言葉に詰まった。それから右へ左へ視線を泳がせてから、ごにょごにょと言い訳を始める。 私はというと、そんな燐を冷たい目で見遣ってから本日何度目かも知れぬ溜息。 「べ、別に勉強なんか出来なくたって生きていけるんだから良いだろ!」 『そういう問題じゃないでしょうが。少しは雪男くんを見習ったら?』 弟はあんなに勉強の出来る良い子なのに、兄の方ときたら。言い終わってから気付く。地雷を踏んでしまった、と。 己の拳を握り締めたままじっと堪える姿を視界で捉えて、自分のしたことを酷く悔やんだ。俯いたままの彼の表情を窺うことは出来ない。 「わりぃ。俺、今日はもう帰るわ」 『……り、ん』 ぎりぎりと、音が聞こえそうなほど力の込められた指。 無意識に伸ばされた私の手は空を切るだけで、後に残った後悔だけがそっと私の心を押しつぶした。 夕霧に消える背 |