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つぅ、とこめかみから頬を伝う汗を拭うのも嫌になってくる。

うだるような暑さに私は既にギブアップ寸前だというのに、目の前の男は涼しい顔。志摩くんが言ってたように実は超人なのではないだろうか。


「名前さん。今、失礼なこと考えてませんでしたか?」

『いーえ。滅相もございません』


自分でもむかつくほどの作り笑顔で言ってやれば溜息混じりの返事。先生は大変なようで。

はいはい、なんて呆れ顔で言うものだから足を踏んでやろうかと思ったのに、簡単にかわされた。


「全く…誰の為に付き合ってあげてると思ってるの」

『さぁね』

「赤点取ったら夏休み潰れるよ?」

『それはやだ!』


今のところ、私のテスト結果は雪男の双子の兄である燐くんと良い勝負。赤点ギリギリのすれっすれ。つまり崖っぷちである。

そのせいで彼の胃痛は増すばかりなのは少し申し訳ないと思っている。本当に、本っ当に少しだけ。


『だいたいさぁ、なんで夏を目前にしてクーラー動かないの』

「仕方ないでしょ。兄さんが壊しちゃったんだから」

『……ふつうリモコンの操作間違えただけでぶっ壊れる?』

「僕に聞かないで」


わざわざクーラーの無い部屋で勉強する私も私だけれど、雪男がいくら先生と言えど女子寮には入れないのだから仕方ない。

それでもやっぱり暑さには勝てないんだ。あぁ、もう無理。そろそろ限界。


『あっちぃよー…』

「ちょ、名前ッ…!」


バランスを失った自分の体がふらりと背もたれの無い右側に傾く。落ちると思ってキツく目を閉じたのと、雪男の腕に抱き止められるのはほぼ同時だった。

ゆっくりとまぶたを上げれば視界いっぱいに映る愛しの彼。


『ありがと』

「……心配、させないで」

『うん。ごめん』


久しぶりに見た奥村先生、いや、雪男の焦った顔を見ながら内心ほくそ笑んでいたのを知ったら彼は怒るだろうか。








心の中を覗かせて

(少し休んだら再開、)
(雪男の鬼め…)
(何か言いました?)
(いいえ!)





教師であり同い年でありって彼の立ち位置、私的にはおいしすぎると思う。



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