それは、まだ私達が武州にいた頃のお話――… いつものように道場へ向かうと、稽古場には総悟の姿。こんなに早く来るのは相当珍しいことで、私は思わず固まった。 「名前」 『どうしたの?』 「俺が大きくなったら結婚するんでさ」 いきなり何事かと思えば、そう言って着物のすそを掴みながら私をじっと見つめてくる総悟。 突然のことに耳を疑うも、どうやら本人は至って本気らしい。 『……っていうかちょっと待てよ。なんで決定事項?私には拒否権とか無いの?』 「女はあいされた方が幸せになるって姉上が言ってやした」 『ミツバさんが?』 「うん。だからアンタはおれと結婚するんだ」 少しだけ頬を染めながら、尚も真っ直ぐ見つめるその目に私が映った。 『じゃあさ、私のこともみんなのことも守れるように今はいっぱい頑張ろう?』 「お稽古きらい」 『そっか、残念だな。私、お稽古できない悪い子は嫌いなんだよね』 「……じゃあやる」 いくら強がっていても、総悟だってまだまだお子さまなのだ。扱いやすい。……っていうか可愛いな。 『そうだなぁ。総悟が私のことも守れるようになったら考えてあげる』 「ほんと?」 『もちろん』 指切りげんまん。そう言って小指を出すと、総悟は照れたようにはにかみながら小さなそれを絡めた。 『よし、さっそく土方くんを倒しに行こうか』 「おー!」 ぱたぱたと走っていく後ろ姿を見送ると、誰に伝えるでもなく、一人呟いた。今はまだ小さなその背中に大きな期待を乗せて。 『楽しみにしてるからね』 昔むかしのお約束 (ほんと可愛かったなぁ) (一体いつの話でィ) 武州時代の総悟くんが可愛すぎて辛い。鼻血でそうです。生意気そごたん大好き。 |