隣で静かに寝息を立てるゾロさんは可愛いと思う。いや、可愛いっていうか癒されるっていうか…やっぱ可愛い。 寝返りを打つ姿にきゅうう、と胸が締め付けられた。 『ちょーかわいっ、』 「さっきから横でブツブツうるせぇんだよ」 てっきり爆睡していると思っていたのだが、どうやらいつの間にか目を覚ましていたらしい。 急に立ち上がったかと思うと手を伸ばして私の襟首を掴んで持ち上げ、……え、あれ?ちょっとゾロさん? 『死ぬぅぅぅ』 「へえ。そうかよ」 『わっ、ちょ、マジで洒落になんないって!ギブ!』 いきなり手放されたおかげで派手な音を立てながら着地した私のお尻は、盛大に床とご対面することとなった。地味に痛い。 どうしてくれるんだ。そんな意味も込めて頭上に目をやって睨もうと思ったが、身長差のせいで彼の顔は全然見えなかった。うわ、恥ずかしい。 「……ばーか」 『ひどい!っていうかバカって言う方がバカなんだよーだ!』 「…………」 『むご!』 苦し紛れに、せめてもと反論してみたけれど逆効果だったようだ。 大きな手にがっしりと両頬を掴まれてしまった。うん、タコになった気分。そして想像以上に痛いですゾロさん。 「誰がバカだって?」 『ぞりょひゃん!』 「……もう一度聞く。で、誰がバカだって?」 『もめんにゃひゃい』 フン、なんて勝ち誇ったように鼻を鳴らす彼の表情は、どう見ても悪戯っ子のそれだった。 格好いいってずるいよね、だなんて思った私は場違いも良いところだが仕方ない。本当に格好いいんだもん。ちくしょう。 『あー、痛いなぁ』 わざとらしく頬を撫でながら呟いて、立ってから近くなった目線でじっと見つめる。それでも小さい私と彼とじゃ、とてもじゃないけど同じ目線にはなれなかった。 それも悔しいけど、やっぱりやられっぱなしってのも私のプライドが許さん。頑張れ、私。 「……だから?」 『誰かさんのせいでほっぺが痛いなぁ』 「自業自得だろ」 『あ、サンジさんにでも見てもらおっかな!』 そうしよう。言いながらチラリと横目で見たゾロさんはまさに鬼の形相で。思わず逃げ出したい衝動に駆られた自分を叱咤しながら、何でもない顔で一歩を踏み出す。 『ん?』 はずだった、のだが。後ろから腕を掴まれたことによってそれは叶わなかった。不思議に思いながら振り返ると目の前には彼の緑。 ちゅ、と小さなリップ音を立てながら頬から離れていく。 『――…っ!?』 「行くな」 『……は、い』 へなへなと座り込んだ私を満足気に見下したかと思えば動き出したゾロさんに抱えられ、元いた場所に降ろされる。 触れられたところから心臓の音が伝わってしまうんじゃないかと思った。 彼は一体、私をどれだけ夢中にすれば気が済むのだろうか。不意打ちなんて、もっとずるい。 結局勝てるはずもなく (あの、ゾロさん) (……なんだよ) (一番だいすきです) (知ってる) あとがき→ [戻る] [TOP] |