『うぅ…やっぱ寒い』 色とりどりに紅葉していた木々も葉を落とし、心なしか寂しさを感じるようになった12月。 ここ歌舞伎町も冬を迎えていた。 「なまえ、いつものマフラーと手袋はどうしたんでィ」 『……忘れた』 「ふーん…」 『何だその顔は』 「お前やっぱアホだろ」 『うるさい!』 気温が下がっても市中見回りは交代制なので、いつかは必ず回ってきてしまう。 そんなことは分かっていたんけど……徒歩での見回りがあるというときに限って防寒具を忘れてしまったのだ。 パトカーから下りる前に土方さんに説得を試みたけれど「自業自得だ」と言って強制的に降ろされる形となって終わった。 『総悟くーん』 「いやでさァ」 『まだ何も言ってない…!』 「どうせそのマフラーよこせとか言うんだろ」 『ゔっ……くそう』 助けを求めるも断られ仕方なくポケットに手を入れたが、当然の如く少ししか暖まらない。 動いたら暖まると思い足踏みをしてみたが路面が凍っていてバランスを崩した。 頭から突っ込みそうになったが腕を掴まれ、何とか回避出来たらしい。 「あぶねーだろィ」 『……ありがとう』 恥ずかしくなって俯いていると首の後ろの方から暖かさを感じた。 「上向きなせェ」 『いいの?』 「こうしねェと、どっかの馬鹿が転びそうになるんでね。貸してやりまさァ」 『っ、』 急に巻かれたマフラーはまだほんのりと温もりが残っていて、それが総悟のものだと分かると顔に熱が集中していくのが分かった。 「手出しな。ほれ」 『い、いいよ別に。ポッケに突っ込んでれば平気だから』 「ったく」 『いいってば、』 照れているのがバレないように先に進もうと足を出したが、ぐい、と腕を引っ張られ少しだけ顔を寄せられた。 「俺がなまえと繋ぎたいんでさァ」 耳元で囁かれ真っ赤になっている私を余所に、相変わらずの真顔のまま手を絡めて自然な動作で自分のポケットに滑り込ませる。 『……あったかい』 少しだけ顔を上げてみると何人の顔ジロジロ見てるんでさァ、と言われて慌てて顔を逸らした。 ほんのり色付いた貴方の頬 (総悟の顔が少し赤かったのは) (気のせいじゃないよね) あとがき→ [戻る] [TOP] |