「はっはっは、なまえは人気物だなあ」 近藤がこたつの中でバナナをもさもさと食べながら言った。 みかんではなく何故バナナなのか、理由はよく解らないがあえて突っ込まないことにしておこう。 隣の部屋でボロボロになっていた土方も、何やらぶつぶつと文句を言いながらこたつへ畳の上を這いずりながらゆっくりと戻ろうとしている。 やはり投げ飛ばされた痛みは寒さに負けるのだろう、土方の方から流れる空気は確かに冷たい。 「あ!」 すると、今まで一人黙っていた原田が慌てた様に口を開いた。 「どーした原田?」 近藤が聞いた。 「俺、これから市中見回りだった。局長、ちょっくら行って来ます」 「そうか、気を付けてな!」 「はいはい。おー寒い寒い」 言いながら原田は席を立ち、側に置いていた刀を持って寒い外へばたばたと出ていった。 こんな寒い日に市中見回りなど、かわいそうと言うより仕方がない。 それを見送ったあと、なまえは原田の抜けたこたつの一辺にようやく足を潜り込ませ、その暖かさに顔をほころばせた。 「局長ォ!」 「ん?」 廊下の向こうから突然、門番をしていた隊士が部屋に小走りに駆けてきて、原田が閉めたばかりの襖をあわただしく開けた。 「松平の旦那がお見えです!」 「おお、そうか!じゃあすぐ行かないとな」 『え、近藤さん行っちゃうんですか?』 「なあに、話がすんだらすぐ戻ってくるさ。じゃあな、四人で仲良くすんだぞ!」 「へーい」 「わかりました」 こうして、こたつのある暖かな局長室には、沖田、土方、山崎、そしてなまえの四人が残されたのである。 → [戻る] [TOP] |