「おうおう、男四人が一つのこたつにぎゅうぎゅう詰めたァ、むさ苦しいねィ。皆さん何でお揃いで?」 部屋の襖を閉め、三歩ほど畳を踏んでから、沖田は聞いた。 「それがな、トシの部屋のエアコンが壊れちまって。加えて原田と山崎んとこのストーブも壊れちまったらしい」 近藤が苦笑いして答えた。 この話からすると、要するに沖田以外のここに集まった人達の目的は同じだということだ。 そして、私がここに来たのは一足遅かったということでもあり。 この不幸な現実に、なまえは落胆した。 「あ、あのさっ…」 そんななまえの心境を察してか、山崎が一番に口を開いた。 「なまえちゃん、もしよかったら、隣…入る?」 『へ?』 見れば、山崎がこたつの隅へ移動して身体の右側を空けてくれている。 さすがジミー、なんて優しい、となまえは心の中で感嘆を漏らした。 だが、その横で土方がいきなり立ち上がった。 「バッ…何言ってんだてめっ!抜けがけしてんじゃねーぞコラァ!」 「副長!?いや俺そんなつもりはっ」 今にも抜刀しそうな勢いで山崎を罵倒し始めた土方は、山崎よりも何故か焦っているようである。 土方は山崎の次になまえに鋭い視線を移した。 「オイ!」 『はひゃいっ!?』 いきなりの大声に情けない声が出てしまった。 「…ここ、空いてるぞ。…ホラ、な」 『は、はぁ』 何を言われるのかと思いきや、ビビった割には随分優しげな誘いが来たので少し拍子抜けしてしまった。 というか、何だか変な対立が起きているような。 気のせいだろうか。 「…ホラ」 土方が照れた様に急かすので、しょうがなく『じゃあ』とそちらへ足を進めた時。 後ろで事を傍観していた沖田が動いた。 「じゃあ遠慮なく失礼しやーっす!」 正座している土方に向かって、ものすごいスピードで沖田が突っ込む。 「どけ土方ァァァ!!」 「なっ…おわァァァァ!!」 ドガシャァァァァン!! 期待通り土方は局長室の襖をぶち破り、騒音と共に隣の部屋へぶっ飛んだ。 沖田はなにくわぬ顔でそれを見届けると、いそいそと冷えた足をこたつに潜り込ませ、ほっと一息、土方の残していた茶を飲んだ。 「…はー、暖まりまさァ。うわ、このお茶マヨくさっ」 「何すんだ総悟ォォ!!つーかマヨくさかねーよ!!」 隣の部屋から土方の罵声が聞こえたが、沖田は関係無しにくつろいでいる。 → [戻る] [TOP] |