沖田が開けた襖の隙間から侵入した冷たい北風が、足元をくすぐる様に走り抜けた。 「寒い寒いって言ってたらもっと寒くなりやすぜ」 『うっ…確かに』 沖田の言うことももっともだ。 だが、そうとはいっても逆に暑い暑いと言って暖かくなる訳でもないのである。 どうしたら良いものか、なまえは丁度よく訪れた沖田に尋ねることにした。 「あァ、ならついて来なせェ」 どこか暖を取れる場所はないかと聞くと、沖田はすぐにそう言って部屋を出た。 私は寒さで動かない体を無理やり起こしてその後を追った。 冷たい廊下を若干爪先立ちで歩きながら幾つか角を曲がる。 ふと左に見えた中庭の木の葉に、うっすらと霜がついていた。 その木の足元の土は霜柱ができているのか少し盛り上がっている。 すると間もなく、ある部屋の前で沖田が止まった。 「ここなら暖とれるだろィ」 縁側に真向かう障子の前で、沖田が自慢気に言った。 『ここって…』 上を見上げると、表札に《局長室》と書かれていた。 そうすると、間違えるはずもなくここは局長室である。 確かに、真選組局長ともなればこたつの一つや二つ、さらにはファンヒーター、最低でもストーブくらいあるだろう。 「近藤さん、失礼しやす」 沖田が言いながら障子を開け、中に入った。 なまえも、嬉々とした足取りでその後ろから部屋へ入った。 『わあ、こたつだ!』 暖かい部屋の中、まず目に飛び込んできた愛しの暖房器具の登場に、私は思わず声を上げた。 だが。 「おっ!よお、沖田さんになまえちゃん」 「あ、なまえちゃん。沖田さんも」 「なんだ、てめーらも暖まりに来たのか」 「おお!珍しいじゃねーか。よく来たなあ」 こたつの四辺は既に、原田、山崎、土方、近藤の大の男四人によって埋まっていたのだった。 → [戻る] [TOP] |