――ガシャン。 すっかり割れてしまった皿を見ながら、今日は頭が酷く痛むものだと他人事のようにぼんやり思う。 手元から滑り落ちたそれは元の形が分からぬ程にバラバラになっていて、戻らないことは一目瞭然だった。 「ちょっと何やって…って、皿落としたの?」 『すいません。今拾いますから』 「いいよ危ないから」 チクリと指先に感じた痛みに思わず手を引っ込める。見れば小さな赤が滲んでいて、切れてしまったようだった。我ながら随分と初歩的なミスである。 どうしたものかと迷っているうちに体ごと腕が持っていかれ、そのまま彼に抱き寄せられてしまった。 「危ないって言ったろ」 『私だって子供じゃありませんし』 「そういうことを言ってるんじゃない」 君はいつも危なっかしいんだよ。家族は知っていても、長年付き合った友人でさえ気付かないはずのそれ。 驚きのあまり思わず目を見開くのと同時に、彼の観察力が並でないことを改めて認識した。さすが情報屋として裏社会を渡り歩いているだけある。 『臨也さんって、すごいんですね』 「今更」 『性格悪いですよね』 「もう。うるさいなぁ」 『……へぇ。否定はしないんですか』 「少しは黙れないの」 ぎゅう、と強められた細い割に程よく筋肉のついた腕の力。少しだけ安心したのは、悔しいから絶対に言ってやるものかと思った。 11_0620 ← |