突然だが、敢えてここで宣言しておこう。残念ながら俺は、一度に何十人、何百人、例え何千人の人間を騙したって、恐らく罪悪感なんてものは感じないだろう。 それでもたった一人、ナマエを騙すことだけは、それが彼女の為であろうとも辛かった。ぶっちゃけ限界というものを覚えたね。なんというか、あれは精神的にくる。うん。 まあ正直なところ、ここまで自分の中の彼女という存在が大きいとは自分でも思わなかったし、今回のことで改めて気付いたわけだ。 「……そういうもんか」 『どうしたの?』 「いや、ちょっと考え事してだけ」 『ふーん』 自分から聞いておいて随分な反応だなぁと思う反面、これが彼女の通常運転だから仕方ないか、と妙に納得してしまった。 なんてことないやり取りでも、なんだか無性に嬉しくなって、ふわふわと浮かれた気分になってしまう。ここ最近の俺は、本当にどうかしているのかもしれない。 それでも俺たち二人にとっての“普段通り”がそこにはあって、非日常に浸かった俺の、確かな日常があって。 『臨也』 「なに、ナマエ?」 『好きだよ、大好き』 「そう。俺は愛してるけど」 『……ばか』 それはきっと、そんな小さな、二人だけの幸せな日常。 12_0312 ← |