目的の人物はほぼ毎日といっていいほどレッド寮に遊びに来るため、自室で待つことにした。
「十代!」
ノックもせずに勢い良くドアを開け入ってきたのは予想通りヨハンだった。
「よお、ヨハン」
何となく恥ずかしくなり思わず持っていたチョコを後ろへ隠した。
ヨハンは気付かなかったみたいでほっとする。
「今日は十代に渡したいものがあるんだ」
「俺に…?」
何だろうかと首を傾げると、ちょっと待っててくれと言って部屋を出ていってしまう。
慌ただしいなと小さく苦笑を浮かべヨハンが戻るのを待っているとすぐに戻ってきた。
「これを渡したくてさ!受け取ってくれるか?」
ヨハンが差し出したのはバラの花束だった。
「ありがとう…でも何でくれるんだ?」
花束を受け取りながら問うとヨハンはにっこりと笑う。
「俺のとこではバレンタインに十二本のバラの花束を、好きなやつに贈ると幸せになれるって言われてるんだ、十二本のバラはそれぞれ感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠を象徴して、これらすべてを貴方に誓います、という意味があるんだぜ」
頬が赤くなっていくのが分かる、何だかとんでもないものを受け取ってしまったんじゃないだろうか。嬉しいんだけど、恥ずかしい。こういうのをさらっと言ってしまうところがヨハンらしいと言うか。
「そう言えば、日本じゃ女の子から好きな人に贈り物するんだよな、十代は俺にくれないのか?」
ヨハンは俺の後ろの方へ視線を向けにっこりと笑う。
気付かれてたことにびっくりしたが、どうせヨハンに渡すために用意したのだし、きらきらと期待を込めた目で見られたらもう渡すしかない。
「ヨハン…これ、受け取ってくれるか?」
後ろからラッピングされたチョコを差し出すと、ヨハンは大事そうに受け取り嬉しそうに笑う。
「ありがとな、これって十代が俺と同じ気持ちだって思っていいよな?」
「違ったら渡すわけないだろ」
ちょっと呆れたようにそう言うとヨハンが抱きついてきた。
「十代、好きだ!」
ぎゅうぎゅうと力強く抱きつくヨハンにされるがまま、俺もだと言って小さく笑った。
Happy Valentine's Day!
一周年記念&バレンタイン企画でした。
楽しんで頂けたなら幸いです(^-^)