「日吉、大変!
樺地、最近授業が終わったら跡部さんの所に行かないらしいよ!」

「……何の冗談だ鳳」

「冗談じゃないよ。
跡部さんのクラス、今その話題で持ちきりらしいし」

「どんな話題で持ちきりなんだあの人のクラスは…」


跡部さんの誕生日も後三日に迫ってきた今日、鳳が慌てて俺のところにきた。

内容はさっきの通り。


多分樺地もやっと跡部さんの変人さに気づいて跡部さん離れをしたんだ。


「それでね、跡部さんが樺地に理由を聞いても『…ウス』しか言わないから、更に騒いでて……」

「あの人樺地がいないと何にも出来ないからな。良い気味だ」

「日吉…どんだけ跡部さん嫌いなの……」


俺はその話に気分を良くしながら、実験室に向かった。

なんだか今日実験室に行けば、人体模型くらい動いてくれるんじゃないかと思った。







「何で……だ!」


俺が実験室に入ろうとしたら、物音がした。

最初は来た!と直ぐ様扉を開けようとしたが、良く耳を澄ましてみたら物音は隣の家庭科室からしていた。


なんだこれ、めちゃくちゃ恥ずかしい。


イラついたので物音の主犯にこっそり制裁を下してやろうと、家庭科室を覗いた。



ガタガタガタガタ……



静かな空間に唯一広がるミシンの音と、ミシンを操る人物に俺は呆然とした。





「あれ〜?日吉じゃん」

「う、わ…ビックリした…
芥川さんじゃないですか。起きてるなんて珍しいですね」

「だって明後日でしょ?跡部の誕生日!
だから……ね、樺地!」


いつの間にかミシンを止め、こっちに身体を向けていた樺地が黙って首を縦にふった。


そうか、衣装係はこの二人だったのか。


「樺地が最近、跡部さんの所に行ってなかったのは衣装を作ってたからか」

「…ウス。どうしても、間に合わせたくて」

「樺ちゃんすっげぇの!どんどん出来ちゃうから俺見るの楽C〜!」

「確かに、樺地は裁縫が得意ですもんね」

「ホント樺ちゃん跡部のこと好きだから頑張ってるんだよー」


芥川さんニコニコしながら持っていた布をザクザクと切り出した。

おい、それそんなに思いっきり切って大丈夫なのか。



「俺も、手伝います」



仕方ないからこの凸凹コンビの為に俺が一肌脱いでやることにした。





……なんか最近、跡部さん化してきてるのは気のせいだろうか。




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