俺のお気に入りの場所の一つである音楽室。

昼休みはいつも空いているが、今日は誰かがいる。


中からピアノの音が聞こえるのだ。



まさか、遂に──……っ!



そう、期待を膨らませたのも束の間。

ピアノの音が聞こえなくなると、よく知る声が部屋から聞こえた。




「……やっぱりか」


「あ、日吉」

「なんやお前も演奏担当なん?」


中にいたのはピアノ椅子に座って楽譜に書き込みをしている鳳と、少し離れたところで楽譜を持って立っている忍足さん。


「違います」

「え?じゃあなんで音楽室に?」

「ここは俺が好きな場所だ」

「自分、怪談によう出てくるから音楽室が好きなん…?」

「えぇ。そうじゃなければ、音楽なんて大嫌いですから」


顧問が音楽教師なのも少し許せないくらいだ。




「っていうか、鳳の生演奏は知ってましたけど忍足さんのリサイタルは知りませんでした」

「ジャイアンみたいに言わんといてぇな…

多分、送り主は俺の美声に惚れ込んだんやな」

「はい、忍足さん歌お上手ですし、絶対に跡部さん感動しますよ!」

「俺、鳳の生演奏は跡部さんが歌う為だと思ってました。まさか忍足さんが歌うとは」

「まあたまには俺が歌うんもええやん?
せっかくのうちの王様の誕生日なんやし」



あの騒がしい跡部さんも、誕生日くらい大人しく座っていればいいかなって思った。



「そんなことより、日吉も一緒に歌わない?」

「歌わない」




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -