「……ほらよ」 「……え」 昼休み、生徒会長室にて。 俺は校内放送で恋人から呼び出しをくらったので(日常茶飯事)、急いでかけつけてみたら、跡部から可愛らしいリボンがついた、手のひらサイズの袋を渡された。 えっと……俺、今日誕生日と違うんやけど。 「あの跡部様…これ何なん…かな?」 「見てわかんねぇのか。どっからどう見てもプレゼントだろ」 「すみません、聞き方が悪かったわ。…何のプレゼント?」 「俺様の気紛れプレゼントだ」 「え、景吾と付き合うとそんな素敵なことされるん?俺、今めっさ嬉しいんやけど…!」 「嬉しいからってニヤけながら抱きつかれると、気持ち悪いな」 「そんな毒舌も気にならへんくらい嬉しいわぁ…大好きや!」 何とも可愛いことをしてくれる景吾に鬱陶しがられながらも、俺は構わず抱き締める。 すると、俺の熱意に向こうも折れてくれたようで、そっと、遠慮がちに背中へと腕を回してくれた、 「ホンマおおきに。今度お返しせなな」 「…別にお返しほしさにやった訳じゃねぇぞ」 動く度に制服が擦れて、ガサガサと音をたてているプレゼント。 景吾の気紛れって言ってはいたが、一体どんな物なのかさっぱり検討もつかない。 「なあ、これ開けてもええ?」 「……………あぁ」 ……今の間は何だろうか。 あまり開けてほしくない、ということなのか。 でもそんな反応をされてしまうと、逆にこう…開けたくなってしまう。 景吾から少し離れて袋を二人の間へと持ってくる。 可愛くラッピングされているので、開けるのにちょっとだけ躊躇ったが、リボンをゆっくりと解いていく。 そして開いた口から中のものを取り出した。 「これ、指輪?」 何の装飾もない、シンプルなシルバーの指輪。 景吾がこんなシンプルなものをプレゼントに選んだなんて、ちょっと以外だった。 ありがとう、と感謝の意を伝えようと顔をあげれば、そこには耳まで真っ赤に染めている景吾の姿。 今日何度目かわからない驚きに、身体が固まった。 「あの…景ちゃん?」 「うるせぇ、黙って受けとれ!」 「えっと、これってその…所謂プロポー」 「ちげぇよ!」 まさかこんな謎過ぎるタイミングでプロポーズ?しかも景吾の方から?なんて思ったが、違ったらしい。 ということは、これは本当に気紛れ… ま、気紛れでも何でも、景吾からもらえるものは何だって嬉しいのだけど。 「…指輪なんかで」 「え?」 「お前は俺様のモンだって、縛り付けれるなら、何だって良かったんだよ… 今度こそ、心臓が止まったかもしれない。 何で、何でこの人はこんな俺を幸せな気分にしてくれるんだろう。 「指輪なんてなくても俺は景吾のこと、ずっと愛しとる。それこそお前に嫌われても、もう嫌いになれんくらい。……ていうか、ホンマ可愛ええうえ!!」 「うわっ!!」 抑えきれなかった気持ちが遂に行動に出てしまい、近くに置いてあったソファに押し倒す。 「…〜ってーな!侑士、テメェいきなり何すん…っ」 「大好きやで、景吾。これからも俺のモンでおって…」 「ハッ…誰に言ってんだ」 「ダメ?」 「俺様が、テメェから離れるなんざ、地球が割れてもねぇよ」 いつもの様に凛々しい笑顔の景吾に、こちらもつられて笑う。 「なぁ」 「何だ」 「もうあと10年くらい待ってくれへん?…今度は俺が景吾に指輪、渡すから」 一瞬ポカンとしてから、その言葉の意味が分かった彼が不満そうな顔をして長ぇよ、ってちょっとだけ頬っぺたを赤くしながら言った。 だってこれから高校、大学に通ってからから医者になって…自分に余裕が出来るまで、ざっとそれくらい時間がかかるはずだ。 まあ、待てないなんて今さら言わせはしないけど。 「俺様を10年も待たせんだ。それなりの指輪じゃなきゃ、承知しねぇからな」 「おーおー、頑張って働かなアカンわ」 不思議だ。 これから先、見通しもついていないのに俺たちを待っているのは幸せだけな気がしてならない。 俺の下で、俺を見て微笑んでくれる最愛の人に、ゆっくりとキスをした。 ──おまけ── 「つーかよ、絶対侑士がプロポーズだって騒ぐと思ったから、それっぽくないあんな袋選んだのに、見事に言ったな」 「せやかてホンマあれ、景吾からプロポーズされた思うて、めっちゃビビったでぇ…」 「逆プロポーズなんてラブロマンスには邪道か?」 「なんや、景吾がすると様になりすぎて寧ろプロポーズ…」 「……俺はプロポーズされたいけどな」 「……っ!」 「………!!忘れろ!」 「嫌やぁ!忘れられへんわ!!今の録音しとけば良かった…!!」 「もう二度と言わねぇことにする…」 120816 ささ様からのリクエスト、忍跡で甘甘ということでしたが…私あまり甘いお話を書いたことがなかったので不安で堪りません(滝汗) ちゃんと甘くなっていたら良いなと…思います。 リクエストありがとうございました(^o^) ※お持ち帰りはご本人様のみとなります。 |