※残念なことに、幸村様のターンは今回ほぼありません。
ユウジと赤也がちょっと仲良くなるお話。










「…あれ、小石川は?」


四天宝寺が神奈川を征服しようツアー(神奈川観光)を始めてから数時間。

すっかりここを全力で楽しんでいる途中に、ふと副部長の存在を思い出した。


「小春、小石川は?」

「あらユウくん忘れたの?健ちゃんは今回の合宿、お留守番やで」

「あ〜、せやった?」


どっかの店で買ったらしい猫耳を金太郎とお揃いで着けている。小春の方が100倍可愛いけど。


「お土産ぐらい買うてやらんと…」

いやいやいや。
待てよ…俺がバス酔いした時、確かに小石川に背中を擦られた。

やっぱ来とるやんけ!



「たく、どこ行ってしもうたんやアイツ…」


携帯を取り出して発信。出る気配は全くない。


「ちょお、お前ら!小石川が……」

いない。

そう言おうとしたのに、言う相手がいなくなっていた。











「あいつら次会ったら死なす…」


結局小石川も小春もその他も見つからず、立海に戻ってきた。

つーかみんな携帯の電源切っとるとか、どんだけ本気で神奈川楽しんでんねや。



「あれ?あんた…」

「…?」


校門の前に立っていたら、誰かに声をかけられた。
振り返ってみたら、そこには黄色いジャージを身に纏ったワカメ。


「エーット、アナタハダレデスカ?」

「うげっ!英語かよ…」


いや、英語じゃねーし。

何なんだ立海ってこんな冗談が通じないとこなのか。



「あの、もしかして立海のテニス部さん?」

「あ、日本人か…びびった」

「いや、感想とかはいらんのんやけど…」

「あんた四天宝寺中の一氏さんだろ?お笑いテニスの…ぷぷっ…あれマジヤバかったッス!うははっ!」

「あれ見たんか!んでもってめっちゃ笑うとるやん!」



俺の素晴らしき脳内方程式により、俺たちのお笑いテニスで笑ってくれる奴=イイ奴となり、見事このワカメはイイ奴に認定された。

「いやぁ、まさかこんなとこで会えるなんて思ってなかったッスよ」

「え?うちと立海で練習試合するって聞いてへんの?」

「ええーっ!そうなんスか?今幸村部長が家出中なんで、ごちゃごちゃしてたから…」

「そうなんか…大変やなっておーい!おーい、幸村!何してんねんアイツ!家出って、アホか!」

「アホって誰のことかな、一氏」


「「……………」」



俺とワカメしかいなかった校門前という空間に、突如として何かが現れた。

しかも今、俺の名前を呼んだ。絶対呼んだ。


ゆっくり、ゆっくりと振り替えればそこには口は笑ってるのに、目が全く笑っていない(多分)幸村がいた。

しかもその後ろには泣きそうな小石川の姿。
小石川…お前、四天宝寺を捨てて魔王に屈したんやな…



「…覚悟はいいかい?」

「…よくないデス」

「ユウジ、止めとけ!」


小石川の制止の声を最後に、俺は意識を失った。






ワカメと魔王に出会った日

(立海ってホントなに?)


120809