「こんなちんけな笹で願いが叶うと思ってるの!?
短冊が足りないよ!あ、紙の色も少なーい!!」






「…なに、なに。どうしたの幸村くん」

「ブンちゃん突っ立っとらんで手伝って」

「いや、だから何で幸村くんあんなに興奮してるの?」

「七夕、近いじゃろ」

「うん」

「だから」



全く意味がわからない。

去年も一昨年も七夕なんて総スルーしてた幸村くんが、何故今になって七夕に興奮してるのかさっぱりだ。


「ていうか、練習しねーの?」

「急遽七夕の準備に変更した。わかったらさっさと手伝え、丸井」

「…うん」


珍しく柳もご立腹。

まあ、こんな幼稚園でもやりそうなことをやらされるのは人一倍嫌いだろうし。


ていうかさっきから真田と赤也の姿が見えない。



「あの二人じゃったら幸村の七夕企画に反対したから走り込みしとる」

「あ…そう」


キョロキョロと辺りを見渡していたので察しがついた仁王が教えてくれたけど…何て言うか、幸村くんってそういうことしといて願い叶えてくれとかちょっと図々しくないか。


「つーかさ、比呂士はアレ何やってんの?」


先程から部室の隅の机でひたすらティッシュを取り出しては、てるてる坊主を作り続けている比呂士に指をさす。

かつて無いほど暗いんだけど、大方の予想はつくけどさ、誰だようちの紳士落ち込ませた奴。


「あれは幸村が…」

「やっぱりな!そうだと思ったぜい!」


こんなにも人に迷惑をかけておいても尚、幸村くんは願いを叶えてもらおうとしている。神の子なんだから願いの一つや二つ、叶えるのどうってことないじゃん。


「たまには、そういうのにも頼ってもいいかなって思ったんだ」

「うわ!」


いきなり、耳元で声がしたから振り返ってみればいつもと変わらず笑っている幸村くんがいた。

ビックリして動けずにいたら、ニコッと笑いかけてから「あ、ジャッカル!笹持ってきてよ、笹!」なんて俺の相方をパシったので、やっぱり幸村くんの願い事は叶わない気がした。



120701

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