「よし、来週から神奈川に遠征や」

「ふざけんなこのアホ部長」

「せやかて何や神奈川が俺を呼んどる気ぃすんねや…しかもあの立海と練習試合も出来るらしいからな…な、行こうや神奈川!」

「え〜でも来週からって流石に急すぎやろ」

「文句あるやつは残っとればええ。来週から練習倍にするから」

「…………」



こうして突然の決定に逆らうこともできず、俺(と愉快な部員たち)は神奈川に行くことになったのだった。










「着いたー!ここが立海かぁ!」

「落ち着いてくださいよ謙也くん。恥ずかしいから」

「これが落ち着いてられるかっちゅー話や!」

「まあまあ、時間はたっぷりあるんやし、まずは神奈川観光しよか」

「ええやんええやん!白石のくせにええこと言うやん!」

「白石のくせにはいらんで、金ちゃん…」


みんながノリノリで神奈川観光しようとしている中、俺は立海の校門の陰からこちらを覗く、怪しげな目から逃れられずにいた。



「……ちょお、白い…って、誰もおらへんやん!?」

「はい、小石川くんゲット〜」

「えええ!!?」


振り返ればもう誰もいなくて、俺は腕をガッチリと捕んできた幸村に抵抗することを諦めた。






「大体の話しは理解できたけど……何で俺だけやねん」

「だっていきなり出ていくの恥ずかしいじゃん。あんま面識ないのに」


捕まった俺は、立海の使われていないような教室に連れてこられ、お茶を出された。

何で俺は一人だけ置いていかれたはずなのに、こんなにゆったりしてるんだろう。

ちょっと古くなっている教卓の上にはお茶とお菓子と破れたジャージ。


「これ、もしかしなくても幸村の?」

「うん、だから小石川くんってこういうの得意そうだから」

「他の奴には任せられんと」

「そういうこと」


確かに、こんなこと俺くらいしかできひんやろうなぁー、なんて思っていたら幸村がお茶のおかわりを入れてくれた。気ぃ利くやん。

「あ、それ縫い終わってから、四天宝寺の奴らみんな帰ってこさせるつもりだから、ゆっくり縫ってもいいよ」

「……承知しました」





俺、一言も縫うなんて言っとらんけどな。



なんだったらパセリもくれ





120704

遂にやってきた四天宝寺。

幸村様は、遠い地ならば赴くのではなく赴かせる派。
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