「侑士って何であんなに幸村につっかかる訳?」 幸村が氷帝に現れるようになってから、しばらく経った。 その間、俺は幸村と家出同盟なるもの組みお互いに、お互いの家出に協力することを約束しあった。 跡部から俺と幸村はぜっっっったいに性格が合わないから、面倒を起こす前にあんまり絡むなって言われてた。無視したけど。 だって、家出をする奴に悪い奴はいねぇもん。 侑士からも幸村は立海から家出してきたって聞いてたし、ぜひとも気持ちを分かち合いたかった。 氷帝みたいなお金持ちの学校に、しかも同級生で家出する奴なんかいないし。 そうして仲良くなったはいいけど、侑士が幸村のことになるとやけにウザさが増す。 ストレスで禿げそうになる。 だから本人に直接聞いてみたのだ。 「嫌いやから?」 「何でお前が疑問系なんだよ。俺は更にそれが疑問だばーか」 昼休みに生徒会室に遊びに行ったら跡部に追い出されて、俺たちは仕方なく廊下に座り込んでみた。そこからの侑士取り調べnow。 とりあえず俺は幸村が結構好きなので嫌な思いをさせたくない。 かと言って、侑士が全部悪い訳でもない気もする。こう見えて意外と人のこと考えてるし。 自分から突っかかりに行くことなんてまずない。 「幸村がお前に何かしたの?」 「うーん…そういえば初めて会った時からあんなんかも」 「……もう俺、お前と友達やめるわ。少しでも期待した俺がバカだった」 「岳人どないしたん?俺やって気に入らん奴の一人や二人おるわ」 度なんか入ってもない眼鏡をクイッとあげるその仕種は集中する前か嘘を吐いているときの癖だって知ってるんだぞ。 天才も癖はどうにもなんねぇよな? 「じゃあさ、侑士は幸村のどこが気に入らないわけ」 「さあ?」 「さあって……理由も無しに人を嫌う奴じゃねぇだろ。言えって」 隣で驚いた顔をしているこいつに割りと真剣に聞いてみる。 ずっと友達やってきたのに俺にも嘘吐くなんて許せねぇし! 「……誰にも言わん?」 この三年間で一番弱々しく不安げな侑士の声に喉が詰まるような感じがした。 「…今さらだけどよ、それって、本当に俺が聞いても良いことなのか?」 「岳人ならええんとちゃう?」 「だから何で疑問系なんだよ…」 さっきのあの侑士はどこへ行ったんだ…と言いたくなるほどいつものムカつく余裕の笑みを浮かべてきた。 「俺な…幸村のこと好きなんやわ」 120114 続く |