一昨日くらいに突然、幸村が氷帝に来た。


しかもしばらく氷帝のテニス部にいるらしい。
何故ここに白羽の矢が刺さったのかはわからないが、幸村曰く"家出"らしい。

その話を詳しく聞くと不機嫌になるのでもうしないことに決めたが、何で家出なんだ?部活は家じゃないだろ。




「シシド♪はさ」


「宍戸だ。音階みたいに呼ぶな」


「つれないなー」


「人の名前で遊ぶな。お前も嫌だろ…名前でからかわれるの」


「それって精市のことを言ってるのかな?もしかして宍戸も変な読み方しちゃった訳?…この変態!」


「ちげーよ!忍足が言ってたんだよ」


「あのクソ伊達眼鏡DXめ」


あ、なんか忍足バージョンアップしてる。



部活後に校門の前で迎え待ちをしていた幸村に捕まり、話し相手を強要されること早30分。
この30分の間で忍足の悪口を50回は聞いた。どんだけ嫌われてんだよアイツ!



「でさ、宍戸は部員の中で誰が一番好き?」


「200人いんだぞ!わかんねぇよそんなの」


「あれ?即答で鳳って返ってくると思ったんだけど」


「長太郎は………」


「何でそんなに渋い顔してるの?もしかして実は苦手?」


「いや、苦手じゃないけど…スキンシップが過剰っつーかな、時々そっちのヤツなんじゃねぇかなって疑う」


「あー…まあ、その気持ちわからなくもないかな。俺もよく柳生に引いてるし」


「柳生って…あの紳士で有名な!?」


幸村の口から出た意外な人物に自然と興味がわいてきた。あの眼鏡紳士がホモとか想像できない。


「柳生はさ、仁王とイリュージョンする為にすっごい研究しててさ。二人で一緒に行動してたんだけど、そんなことしてたら仁王のプライベートまで調べるようになってさ。気づいたらストーカーみたいになってたの。

みんな初めは仁王の方がストーカーチックで気持ち悪がってたのにいつの間にか、柳生が上回っちゃったんだよね…」


「…………」


心の準備ができていなかった俺には壮絶すぎる『ストーカー紳士ができるまで』は難し過ぎたが、なんとなく柳生の気持ち悪さは伝わってきた。

話しながら当時のことを思い出したようで「幸村、顔!」ってツッコミたくなるくらい彼の顔がやばいことになっている。


これは相当だな…



「立海って怖いとこだな…前々から思ってたけど」


「でしょ?今さっきので違う意味になったと思うけど」


なんだかよく分からない空気に包まれた後、俺と幸村は握手をした。


「良かったよ。氷帝にもちゃんと常識のある宍戸みたいな人がいて。滝の次に好き」


「俺、正直幸村ってワガママそうで苦手かと思ってたけど意外と苦労してんだな。真田の次に」


お互いに褒めたり貶したりしながらも握手を続行していたら、どこからか「ぶちょー!」って声がした。



「はぁ…はぁ…、氷帝遠いっすよ!」


「赤也遅い!どんだけ俺を待たせるの」


「でも部長!」


「でもじゃなーい!でもとか言うなら俺もう戻らないから」


「す、すいませんっ、でもってもう言わないんで戻ってきてくださいよ…」


「だったら明日も迎えよろしくね?」


「はいっ!」



「ん。よろしい。

それじゃあ宍戸、また明日ね。付き合ってくれてありがとう」


「……………………じゃあな」



俺は今目の前で繰り広げられた先輩後輩の会話に追い付けてないまま切原をひっぱる幸村と別れた。


神奈川からわざわざ迎えに来てくれた切原にあんな態度を取っても尚怒られない幸村って、やっぱりワガママで苦手だと思った。



一人で帰れよ!




111220






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