「用意!スタート!」



アップが終わったら今日は久々に跡部のサーブを測れる予定だったんだけど、思わぬ訪問者で予定が狂っちゃってまた先延ばしになった。


まあ少しは残念だけど、その訪問者の記録をこんな至近距離で測れるのもなかなか貴重な体験だからいっか。



「滝…くんだっけ。俺の、どうだったかな?」


「滝でいいよ。同級生なんだから気を使わないで」


「じゃあ滝。俺の記録どうだった?出来るだけ詳しくよろしくね」

え…なんかすごく、ものすごく馴れ馴れしくなったのは気のせい?


「うん、気のせい」


「そっか……(ん?)

じゃあ解析も含めて……」



なんだか彼からよろしくないオーラが出ていたのでスルーしてはいけないことの様に思えたけど敢えてスルーしておこう。

最悪の場合、死ぬかもしれない。

この若さで死の危険を感じた俺は、目の前にいる王者立海の頂点に君臨する幸村精市に先程のサーブの速さや…っていうか何で彼はここにいるのだろうか。



「話したら長くなるんだけどさ…」

長くなるの?まぁ長話は嫌いじゃないから良いけどさ、あのさ。
さっきから俺の心読んでる?


「うん、読んでる。君もわざわざ声に出さなくても伝わるから楽でしょ?
俺が滝を労ってるんだから滝は俺に感謝すべきだよね?
だったらお礼に俺の話し聞いて」

「なんでそうなるの!?っていうか幸村って結構わがままだね。俺びっくりしちゃったよ」


「いいからいいから、そこ座って。滝はおとなしく俺の話し聞いてればいいの」


幸村は俺の肩を掴んでベンチに無理矢理座らせ、その隣に自分も腰をおろす。


今、俺の頭のなかにはジャのつくガキ大将が浮かんでるんだけどあながち間違ってはないよね…?




「そういうのも全部こっちに流れてきてるからね。気を付けて」


「………うん」


そこからの記憶はあんまりない。
練習もせず、幸村のマシンガントークを延々と聞かされていた様子を跡部が見ていたらしいが(怖くて注意できなかったらしい)俺はかなり初めの段階から白目を向いていたらしい。

確かに意識が所々飛んでいた。

それでも辛うじて聞き取れた幸村の話しを繋ぎ合わせると、つまらないことで真田とケンカしたはいいけど勢いで周りともケンカしちゃって部活を飛び出したら仁王が味方になってくれて柳生がストーカーでジャッカルがハゲちゃって…真田がおっさんだった。


みたいな感じになった。

この話しを宍戸にしたら熱があるんじゃないかと心配されたけど、平気だよって言っといた。




こうして落ち着いてから話しをしている最中の彼を思い出すと、とっても悪い顔をしていたけどなんだか寂しそうで後悔もしている風にも見えた。




全く、素直じゃないんだから。




テニスはあんなに強いのに、どうしてこんなにもこっちはダメなのかなぁ。




つまりは完璧な人間なんていないってこと、






111215



幸村と滝が公式で並んでくれたら私はまじで鼻血を出します。


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