なんでこうなってしまったのか。 何度そう考えても、原因なんて見つからない。 「やっぱよ、調子狂う」 「ってか狂いすぎだろ」 さっきから何度もこけかけている相棒、ブン太がボソッとつぶやいた。 幸村がいないだけでコイツはこんなに練習ができないのかと思うと、将来が心配だ。 「だって幸村くん、学校では普通に会うのに部活で会わないの…なんか変じゃね?」 確かに、廊下で会ったら普通に挨拶とかするもんだからつい部活にもいる気がしてならない。 「まぁ、幸村にも…色々あるだろ」 さぁ練習するぞーなんてブン太に声をかけたら、目立つ赤い髪がピタリと止まる。 「…どうしたんだブン太」 「ジャッカルって、やっぱ大人だよな」 またコイツは訳の分からないことを言い始めた…と思ったら、急にブン太がその場に座り込んだ。 その動作に、何故か俺も慌てて座り込む。 「なんだよ。どうしたんだ、そんないきなり」 「不安なんだ…あん時みたいに」 コイツが言うあの時、っていうのは幸村が入院していた間のこと。 当時は幸村の分も、そして幸村の為にもみんな全力で練習していた。 でもその奥底は、不安でいっぱいだった。 駅のホームでいきなり倒れた幸村を目の当たりにした赤也は、しばらく何でもないことでよく泣いていた。 そんな赤也の気持ちを一番に理解しているブン太が、いつも慰めてやっていた姿を、俺は何度も目撃した。 だから俺は知ってたぜ。 赤也を慰めながら自分も泣きそうになってたの。 本当は泣きたいけど後輩の前だし、先輩だから慰めてやらなきゃいけない気持ちが勝ってたんだよな。 顔を伏せたブン太の肩に手を置く。 「たまには、良いんじゃねぇの?」 「何がだよ」 「こっそり泣いたって。ずっと我慢してただろ」 「……うん」 その返事を最後に、ブン太の体が小刻みに揺れ始めた。 結構、ダメみたい。 111114 ジャッカルって真田と別次元で大人っぽい |