俺は多分、今まで頑張ってきた。
でもそれじゃダメだったんだ。
曖昧な努力ほど、不確かなものはこの世にないのだから。
「…宍戸さんはそれが分かってるから、だから頑張れるんですね」
にこりと笑う長太郎を見て、俺も自然と頬が緩む。
練習が終わってからも居残って二人で練習をしていたら、沈んでいく夕日を見て綺麗だな、なんて話しをし始めた。 そしたら手が止まって、いつの間にかベンチに座って話し込んでしまった。
「長太郎だって、こんな俺の練習に付き合ってくれてるじゃねぇか」
「俺は……宍戸さんの努力を見てきたし、これからも見ていきたいから…」
「何か、保護者みてぇだな」
「はい、身長的にも」
「…真顔で言うなよ。ボケてんのか本気かわかんねぇから」
肩をパシンッと軽く叩いてから、お互いに笑い合ってまた空を見上げる。
夕日はまだ綺麗なまま、少しだけ西に傾いていた。 普段なら練習を再開するところだが、今日は不思議とそんな気にはなれない。もしかしたら、これがセンチメンタルって奴なのかもな……わかんねぇけど。
「………宍戸さん」
「ん?」
「俺、宍戸さんがいたから、今こうして一緒に頑張れるんです」
「お、おう…いきなりどうしちまったんだよ…照れんだろ」
「今日だって、こんな俺に残って練習しようって声をかけてくれて俺、俺………好きです!」
「……………え?」
また真顔で話す長太郎に、俺はやっぱりリアクションが上手くとれなかった。
それからしばらく、気まずいままダブルスを組んで練習したのは言うまでもない。
120815
長太郎は最初から最後まで天然全開でいてほしい願望から生まれた。
宍戸さんはBL的に好きを受け止めたけど、長太郎は先輩的な好きのつもりで言っていたので、これはBLじゃないんだよ!と言い張ります。
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