「宍戸さーん!こっち向いて!」
「百歩譲ってこっちを向いたとしても、確実に消されるぞお前」
俺が怪我をしたので、久々に宍戸さんがシングルスの試合に出ることになった。 最初は宍戸さんも、鳳もダブルスで出られないことに反対していたが、跡部さんの『後ろから、絶え間なく聞こえてくる愛の囁きから逃げれるんだぞ』の言葉にあっさりとシングルスに出ることを決意したのだ。
それ以来、めっきり練習はシングルス用に切り替わり、宍戸さんと一緒に練習出来なくなった鳳は、せめてもとビデオカメラで宍戸さんを撮るようになった。 意味わかんねぇけど、落ち込むどころか喜んでる鳳が何かすごいと思った。
「宍戸さん、楽しそうだなぁ」
「ダブルスと違って気を遣わなくていいし、コートもいつもより走りやすいだろうからな」
「うん、そうだね…俺なんか特に大きいから…あ!宍戸さん!今の笑顔もう一回お願いします!」
「宍戸さん、もう完璧に無視してるな」
「クールな宍戸さんも好きです!…わ、やった!今ので決まったよ!勝った!」
「あぁー…本当、お前にはついていけねぇ…」
宍戸さんのことになると、ウザさが増すコイツに俺はどう対処していいものか、考えることもしたくない。
「長太郎、てんめぇ…試合中にうっせえんだよ!!」
「わああ!宍戸さんお疲れさまです!大好き!」
「キモい、キモい!止めろ、写真撮るな!」
パシャパシャと目の前の宍戸さんを撮りまくる鳳。 フラッシュのせいでチカチカするのか、目を瞑ってなかなかカメラを奪うことが出来ない様だ。
「うわ…ちょっと宍戸さん!この目をギュって瞑ってるやつ、すっごく可愛いです!」
「はぁ!?貸せ!フォルダ内の俺の写真全部消してやる!」
「残念、保存完了しました☆」
あの図体でキャピキャピする鳳にイラつき始めた宍戸さんにまたきゃーきゃーする鳳。
この二人はよく飽きないな…なんて思いながら隙をついて鳳が持ってたデジカメを奪ってみた。
せっかくだからみんなに見せてやろうっと。
120720
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