もっと君に恋したい(幸ブン)







ブン太と付き合い始めてから俺は変わった……らしい。



『幸村が最近優しくて気持ち悪いナリ』

『アデュー』



っていう、仁王と柳生の(謎の)会話をたまたま聞いてしまってからと言うもの、みんなが口々に

『幸村が変わった』

『幸村が優しい』

なんて言ってるのを小耳に挟むことが多くなった。

俺は俺のままでいたつもりなのに、ブン太にあっさりと変えられたみたいだ。



「ブン太は不思議だね」

「俺?不思議じゃないと思うけど」

「本人がわかんないなら良いんだけど」

「ふーん」


さして興味もない様な彼の態度に笑みが溢れる。
付き合ってからも尚、俺にこんな態度がとれるなんてやっぱりブン太は不思議だ。

だからこそ、面白い。

こんなにも、思い通りにならない奴は生まれてこの方、出会ったことなんてなかった。

しかも俺は思い通りにならない程案外燃えるタイプらしい。

ブン太と出会って、俺のことなんてどうでもいいみたいな素振りをされてから、スイッチが入ったあの時のことを、今でも鮮明に覚えている。

今だって

『幸村くんがいくら強くたって、俺が天才的なことに変わりないだろい?』

なんて強気なブン太がマジ可愛い。

そんな彼をもっと知りたいと思ったのだってごく自然のことだった。
ちょっと前に、俺に対してツンツンなブン太が食べ物に対して非常にデレデレしている姿を見て、俺の中で何かが弾けた。

(おいおいおいおい!ツンデレ綺麗に使い分けすぎだろ!
日頃からのツンの中に時折デレが混じるからこそのツンデレなんじゃないのか…!?)

っていうのがその時の感想で、今も一字一句変わっていないことに泣きたくなる夜もある。

まあ、あの時と確実に違うのは、今のブン太は俺のモノってことぐらいかな。


「…ニヤニヤしてて怖いんだけど」

「ニヤニヤしたくもなるよ。だってブン太が可愛」

「うっさい!」


怒鳴ったブン太がそっぽを向いてしまった。
コイツ俺が目の前にいるのに良く顔なんか逸らせるよね。尊敬するよ。ジャッカルが。


「だって本当のことだし」

「可愛いって言われても、全然嬉しくねぇ」

「じゃあ何て言われたら嬉しい訳?」

「……………なんもねぇよい」



こっちをチラッと見た彼が、耳まで真っ赤にさせているのが目に入った。

…え、これって、もしかして、怒ってるから顔が赤いんじゃないの?


「ブン太、もしかして照れてる?」

「てってっ照れてないし!」

「……好き」

「いや、何でこのタイミング!?……っ!」

「好きって、言いたくなったから。今のブン太が最高に可愛くて」
「〜〜っ!!だから全然嬉しくねぇ!!」


やっぱり顔を真っ赤にして怒鳴るブン太は、恥ずかしそうに唇を噛んでいるので、俺はついついそんなに噛んだらダメだろ?なんて言って、プニプニした柔らかいブン太の唇にキスしちゃったりして。

俺が求めてた俺に強気じゃないブン太を見れて、今すっごい幸せな気分。おまけにチューまでしちゃった。


どうしよう、こんな幸せを噛み締めるとか、本当に俺じゃない。
どうかしている。

一人の人間に、こんなにも夢中になるなんて。


もっと、いろんなブン太を見たい。
そして、俺はそんな君にもっともっと恋がしたいんだ。


暴れる彼を、離しはしないと言わんばかりの強さで腕の中に包み込んだ。



120716




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