好きだと言わずにいられない(蔵謙)







何で、好きになってしまったのか。

そんな事、言葉で説明できるほど俺の頭は良くない。




「ほんでな、金ちゃんをここのコートに連れてってしまえば、小春の手で捕まえられるっちゅー訳や。
…なぁ、聞いとんのか謙也?」

「聞いとらん」

「悪びれもせずよく言えるな、お前…」

「せやかて、俺アホやから一度に二つの事出来ん」

「俺の話よりも、そっちのが大事なんか?」

「せやなぁ…まあ、そうなるんちゃう?
すまんな白石」

「別にええよ。
謙也が俺に黙って悩むなんて、珍しいしな」

「なんやそれ、失礼やな(笑)」


その場は笑って誤魔化せたけど内心、心臓バックバク。

だって原因はお前や、白石。
相談できるかボケ!


「せやかて白石も、最近はボーッとし過ぎとちゃう?悩みごとか?」

「あー…うん、悩みごと」

「俺がいくらでも相談乗るで」

「じゃあ、遠慮なく聞いてもらおか」

「おん、任せとき」


「俺の悩みはな」


そこまで言うと白石は少し視線を外した。


何やねん、そんな言いにくいことなんか。



「どっかの誰かさんが、くだらんことで悩んどることや」





「……ん?」




え、それ白石が悩む必要あるん?


それが俺の率直な感想だった。

だって、つまりは

"人が悩んでることが悩み"

なのだ。

白石になんの関係があるんだか。


「じゃあ白石はその悩んでる奴が心配なんやな」

「それはちょっと違うな」

「じゃあ何やねん!
そうじゃなかったら、何でお前が悩んどんねん」


俺が少し呆れた顔をして白石を見たら、白石は更に呆れた顔で俺を見ていた。


え、何で?


「ほんまに分からんのか、謙也?
ここまで俺は素直に、悩みの内容を打ち明けても尚分からんのか」

「いや、何のこっちゃさっぱり」

「アホ、しね」

「ちょお待てや、アホは良いけどしねはないやろ!」

「アホは良いんか?」

「あああ!話が逸れていく!」



ダメだ、全然話が進まない。

って言うか何の話してたっけ?




けどとりあえず、俺は白石を好きでいていいのかもしれない。





110918





(っていうか、俺かて謙也好きなんやから大丈夫。悩むことなんかあらへん。)

(はぁ!? ななななないきなり何やねーーん!!)

(お前の考えとることなんて、完璧で絶頂な俺が分からん訳ないやろ!)

(……それ、ただのエスパーと違う?)








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