「もし俺が死んだら、どぎゃんすっと?」
いつもと同じ声のトーンで、珍しく"もしも"の話をする千歳に、俺は首を傾げた。
千歳がこんな話しをするなんて珍しい。
もしトトロに会えたら〜とかじゃなくてトトロはいるから絶対に会える!とか、意気込んで話すあの千歳が……しかもなんか、内容重くない?
「…死ぬん?」
「"もしも"の話しばい」
ニコニコしながら言うコイツに、ちょっとだけ心がチクッとした。 何だろう、何でこんな…
「"もしも"でも、あんま考えたないなぁ」
「白石そぎゃん俺んこつ愛してくれとるん?」
「…………知らんわ」
素っ気ない態度を取ってはみたものの、内心は凄く不安。
千歳がそんなことを言うから、どんどん俺の頭の中はその"もしも"でたくさんになった。
だってこの放浪し放題な男が明日フラッとどこかへ行ってそのまま戻ってこなかったら、俺は一体どうすればいいんだろうか。
「…すまんばい。白石にそげな顔させとっちゃいかんね」
「ばーか」
頭をポンポンと叩いてきた千歳に抱きつく。
こうして密着していたら、千歳が俺の傍にいない日がくるなんて、想像もつかないのに。
でも、想像もつかないからこそ余計に離したくなくなって、背中に回した手に力が入る。
「俺の隣は、最初から最後までお前だけおったらええねん。 他の誰にも譲らんし、俺が許さへん」
「嬉しかねぇ。俺も、白石が嫌だっち言うても離さんたい」
耳許で小さく呟いた千歳がギュッといつもより強く抱き締めてくれた。
いつか俺の隣が空いたとしても、そこに千歳以外の誰かが埋まることなんて、絶対にない。
耳を澄ませば聞こえてくる心臓の音を聞きながら、その音が止まる時までコイツと一緒にいたいと願った。
120706
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