『こんな夜中に何事だ』
『今から学校に集合ね。じゃ、待ってるから』
現在の時刻は午前0時半。 布団の外でいつまでも鳴り止まない携帯からのコールに起こされ、出てみれば精市からの呼び出し。 内容は今から学校に来い、というものだった。
一度言い出したら自分の意見を絶対に曲げない彼からの呼び出しに、仕方なく準備をしてからこっそりと家を抜け出し、学校へ向かった。
校門の前まで着くと、門が少し開いていた。 どうやら、誰かが鍵を無理矢理壊して開けたらしい。 俺の足元には無惨にも原型を留めていない南京錠が落ちていた。
誰がやったのか大方の予想はつくが、こんなにも大胆に破壊するなんて珍しい。
「早かったね。もうちょっと遅く来るかと思った」
「深夜に、急に呼び出された俺の身にもなってほしいものだな」
「そのことに関しては謝るよ。でもどうしても柳に会いたかったから」
「…俺は出来れば会いたくなかったがな」
精市に(ほぼ無理矢理)手を引かれるがまま、部室の前まで連れてこられた。
「今からテニスなんて本気で嫌だからな」
「大丈夫、テニスはしないから」
そう言って精市が部室の扉を開ける。 促されるがままに中に足を踏み入れたら、何やら暗闇で蠢く影。
「おい、誰かいる…」
「「「「おめでとー!!」」」」
パンバンッ!と本来なら真夜中にするはずのない音が耳に飛び込んできた。
「…びっくりした?」
俺の後ろからひょこっと覗き込んできた精市の悪い顔に、ようやくこの謎の呼び出しの意図が見えてきた。
パチッと点けられた電気によって、影の招待が明らかになる。
仁王に丸井に切原、そして床に倒れている真田と柳生。
クラッカーを鳴らした三人は夜更かしに馴れているから良かったものの、この床の二人は普段ならとっくに夢の中だろうから寝てしまっても仕方ないか。
「うっわ、真田と柳生…動きが悪いとかそんなんじゃないね。動いてもねーや、こいつら」
「抵抗せんからって足で踏みなさんな」
「柳先輩ぃ!おめでとうッス!」
「あ、赤也てめぇ一人だけ柳に抱きついてんじゃねーよ!」
ワイワイと騒ぎ始めるコイツらに、自然と笑みが溢れた。
「わざわざ、こんな夜中に集まったのか?」
「はい!みんなで家族よりも、誰よりも早くお祝いしようってなって!」
「…そうか。みんな、ありがとう」
周りを見渡して、それぞれの顔を見る。
俺は、立海に入って、このテニス部に入って、本当に良かった。
こんな最高な奴らと出会えて、本当に幸せだ。
今なら心からそう思える。
「ジャッカルが今、コンビニでお菓子買ってきてくれてるから待っててね」
「精市…使いっ走りはいけないな」 「てへっ」
「……ふ、可愛くないぞ、全然」
「でも、真田がやったらきっと可愛いよ!」
「くっ、はっはっは!弦一郎は気持ち悪いだけだ」
(((声をあげて笑った…!?)))
「…と、お前たちが思った確率98%」
「「「恐れ入りました!」」」
夜が明けるまで、この見馴れた部室で中学校生活最後の誕生日パーティーを存分に楽しもうじゃないか。
窓の外の暗さが、この部屋の明るさを際立たせてくれている気がした。
あと、家の前で俺を呼ぼうか呼ぶまいか悩んでいた貞治とはちあわせて、一番最初に誕生日を祝ってもらったことは秘密にしておこうと思う。
120604
柳先輩!誕生日!おめでとう! 大好きだああ!!
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