そうこうしているうちに、幸村くんと丸井くんがキッチンに籠ってから1時間半が経った。
その間、暇になった仁王くんが意外と純粋な世間知らずの跡部くんにあることないこと吹き込んで遊んでいた。
「俺みたいな貧乏人は、家に帰ってからもロクに夕食も食えんのじゃ」
「何でだよ。部活終わりで腹減ってだろ」
「そう、腹ペコぜよ…でもな、みんな食えるほどの量がないんよ」
「…だからお前、自分のディナーを我慢してまで家族に食わせて…」
「まあな。けど、自分の家族が腹空かしてる姿を見るくらいなら俺の我慢なんて……うっ!」
「に、仁王!?」
「はは…すまんのう…実は昨日の晩から何も食っとらんのじゃ」
「おい!誰か、誰かこいつに食べるものを…!」
なんて叫びながら顔を真っ青にした跡部くんがキッチンに駆け込んだので幸村くんが驚いて、事情をすべて聞いてしまった。
案の定、仁王くんは幸村くんからばっちりお叱りを受け、ガムテープで口を塞がれてしまったので仕方なくテレビを眺めているだけ。 跡部くんは騙されたことに腹を立てて、さっきから仁王くんのあのチョロ毛をひっぱったりして地味に攻撃しつつも、あまり見たことがないらしいテレビに心を躍らせている。 隠したって、輝いたその瞳を俺は見逃したりせえへんで!
「はーい、できたよ!」
「ったく幸村くん人使い荒いっての…」
持参してきた可愛らしいエプロンを着用した二人がこちらにやってきた。まあそろそろ夕食の時間帯だし調度いいか。
…ん?
「まだみんな帰ってきいひんな…」
今朝から大荷物で出掛けて行った白石家(―俺)が俺のバースデーに不在なんてありえない。
「あー…今日ね、帰ってこないよ」
「え?」
「俺様が北京ダックのついでに一泊二日の温泉旅行4人分、用意した」
「えええ!?俺一言も聞いてへんし、北京ダックのついでって…普通は逆とちゃうん!?」
「跡部って本当、何でも用意してくれんだぜ!ありがとな〜」
「んんんんん、んんんんんんんん(俺からも、お礼を言うナリ)」
「忘れてた…仁王、そろそろ取っても良いよ」
「いででで…!!ふぅ、やっとまともにしゃべれるぜよ」
「…ぷっ」
ガムテープの後が若干残っている仁王くんを見てやっと笑った跡部くん。しかも爆笑…なかなか拝めないので、しっかり目に焼き付けておこう。
「さぁお皿運ぶから白石も手伝ってよ」
「え、俺も?名指し?」
「作ってあげたんだから当たり前でしょ」
「いやでも誕生日…」
「だから?」
「…はい」
こうして、家族を追い出してまで開催されたバースデーパーティで何故か一番働かされた俺でした。
「この無駄のない焼き加減…んんー、エクスタ「黙って食べて」
おわり。
120414
白石、ハッピーバースデー!
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