「悪い、俺今は部活に集中してーから。お前とは付き合えない」
その声を聞いて誰だかは一瞬でわかった。そしてまたかと溜め息をつきそうになったある昼休み。
最近宍戸はモテるらしく、よくこうして告白をされている現場に遭遇してしまう。
俺が知っている限りでは、いつもこの台詞で断っている。 好きな人や彼女がいるのか本当のところは分からないが、部活のことを一生懸命にしているのは確かだ。
でも本当にそんな断り方でいいの?って俺は思うよ。
「……おい」
「うわ!」
考え込んでいたらいつの間にか隣に不機嫌そうな宍戸がいた。
「盗み聞きしてんじゃねーよ」
「こんなところで告白されてる宍戸が悪い。っていうかどこでも告白されてるよね」
「それはアレか。他のも聞いたのか」
「うん。ま、俺だけじゃないだろうけど」
「あ〜最悪だ…。だから昨日忍足があんなニヤついてたのか」
「そうだろうね…忍足気持ち悪いな…」
「あぁ…不気味だったぜ」
ニヤついた忍足を思い出したらしい宍戸の顔色が悪くなっていった。 どんだけトラウマだったんだ。
「とにかく、あんま言いふらしたりすんなよ?」
「だいじょーぶ。俺そんなことしないから。あ、でも…」
「は?でも!? 何かあんのか!」
「あのいつも断るときに部活のこと出すのやめた方がいいよ」
俺が言ったことが理解できなかった宍戸がポカンと口を開けてから、徐々に顔を赤くしていった。本当に純粋で可愛いねえ…
「だって本当のことだろ…、今の俺には部活が一番だし」
「そうだろうね。でも部活を振る口実に使っちゃダメだよ」
「なんだよそれ。別に俺はそんなつもりじゃねえよ」
「俺は部活のせいにされてるのが嫌でこんなこと言ってるんじゃなくて、宍戸のその口実のせいで勘違いして勝手に落ち込んでる子がいるからだよ。
だから、他に好きな人がいるとかそんな断り方をしてあげてほしいんだよね」
俺は今まで溜まっていたことを一気に吐き出した。
だってその度にアイツが落ち込んだら俺が面倒見てあげなきゃいけなくなるんだ。俺だってやりたいことある。
「誰だよソイツ…っていうか何で勘違いしてまで落ち込むんだよ」
「これだから鈍ちんは困るんだよね」
「酷いぞ滝…。
てか、他に好きな奴がいるからって断っても詮索されんのが嫌なんだよ」
「詮索されたらなにかまずいことでも…?」
明らかにおかしい宍戸の態度が不思議で思わずすぐに聞いてしまった。 でもこれはまさか、まさか…
「おお俺、おかしいって思うけどよ…
跡部のことが好きなん…だ」
顔を真っ赤にして誰にも言うなよ!って言った彼を思わず抱き締めたくなった。
「なんだ、心配して損したよ」
「え?心配?」
「だってさっき言ってた子、跡部だもん」
「…え?えっと、それはつまり…」
「両想いってことだ!!」
「……あと、べ?」
きっと嬉しすぎて待てなかったんだと思うけどさ、いきなりそんな興奮して出てこられてもリアクションに困るよ。実際宍戸がちょー困ってるよ跡部。
「俺様とお前は、お互い好きだってことだよ!」
「いやちょっと待てよ!わけわかんねーって!」
「いいや、待たねぇ。俺様は随分待たされたからな!」
「待たせた覚えなんかねぇし何で近づいてくるんだよ!」
「これで俺たちも晴れて恋人同士ってわけだ。喜べ宍戸。俺様といればこの先安泰だぞ」
「全然安泰じゃねぇ!寧ろピンチしかないぞこの先!おおお男同士なんてまちがいなく世間から突き放されるぞ!」
「俺たちの愛を邪魔するなんてできっこねぇよ。宍戸、愛してぶっ」
「もう頼むから黙ってくれ!ごめん滝、早くコイツを埋めてくれ!」
必死になって助け(?)を求めてくる宍戸を見てニコッと微笑んだらすっごい怒られた。
でも俺はやっと跡部から解放される嬉しさで胸がいっぱいだったから、せっかくだし二人の時間をプレゼントしてあげるってことで、俺は一人、教室へ戻っていった。
111216
宍戸と付き合いたくてたまらないけど、部活があるから付き合えないって言ってるのを聞く度に落ち込んで滝に慰めてもらってる跡部。
わかりにくいですね…
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