何でもないことがきっかけだった。
さり気ない優しさとか、たまに見せる厳しさだとか。
思い当たる部分はたくさんあるけど、どれがきっかけかと聞かれればきっと悩む。
「好き……だなんて言えないよなぁ」
誰もいない病室に俺の独り言は響いて消えた。
多分向こうからすれば俺のことなんてただの幼馴染、あるいは良きライバルとかそんなところだろう。
でも、真田がお見舞いに来てくれるたびにどんどん想いは大きくなった。
自然と彼がいつこの病室を訪れてくれるのだろうかと、待つようになった。
笑ってしまいたいくらい、好きになっていた。
病気のことも彼に励まされたら、全然怖くなくなって、早く元気になることばかり考えて。
「もうテニス出来合いかもしれない、なんてこっちも言える訳ないか……」
この想いを諦めるなんて出来ないと思うけど、嘘をつくことや好きでい続けることはきっとできるから。
最後に言わせてね。
「好きだよ、真田」
「俺もだ」
「え…」
するはずのない声に耳を疑った。
幻聴?
「なぜ、お前はいつもそうやって肝心なことを黙っているんだ」
今までに一度だって見たことない真田の表情に目が離せない。
なんでそんなに切なそうな顔をするの?
わかんないよ。
わかんないし、わかんないけど涙が出てきて、なかなか止まってくれない。
困らせたくなんかないのに、ごめん。
「ごめ……っ」
「俺もお前が好きだ。 だから、一人で闘おうとするな。 俺はできる限り、幸村と一緒に病気と闘って、そして勝ちたい。
それは…ダメか?」
涙でぐちゃぐちゃな顔を覗き込んで、そっと肩に手を置いてくれた仕草が余計に彼の不器用さを際立てるように感じた。
それくらい自然にやれよ。
でもそんなところも纏めて好きになった俺は、きっと一生コイツに敵わないんだと思う。
「ほんと、お前となら乗り越えられそうだよ」
そっと真田の両脇から背中に腕を回して、出会った時よりだいぶ逞しくなったその肩に顔を埋めた。
120131
ずっと前から書いてた。やっと終わった…
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