「これ、何ぜよ」
トイレから教室に帰ったら、机の上にお菓子の山があった。
俺、ブンちゃんじゃないからこない食べれん。
「あー、多分それ手違い。ミス。」
お菓子で山積みになった自分の机の横で突っ立ってたら、後ろからブンちゃんの声がした。
「ミスっていうか、これは嫌がらせの域じゃなか?」
「まぁ普段の俺への態度を考えたら、そうとも取れるな。
でもそれ、他のクラスの女子が俺にくれたお菓子だぜぃ」
じゃあ何、ブンちゃんへの愛でもあり俺への嫌がらせのでもあるみたいな?
どうしよ、俺って実はそんなに嫌われてるの?
よく考えてみれば、いつもブンちゃんには"豚"とか"デブ"とか、"奇跡のプヨプヨレギュラー"とか…常日頃言ってるからかも。
「ごめんなさーい」
「は?何が?
とりあえずそのお菓子、俺に渡しやがれぃ」
お菓子の山に手を伸ばしたかと思ったら、あ!とブンちゃんが声をあげた。
「わかった。 さっき席替えだったろぃ。それだ」
「そうじゃ、この席は前のブンちゃんの席じゃった…」
「それで席替えを知らなかった女子が間違えたんだな」
二人でうんうんと頷いていたら、ふいにブンちゃんが机の上から飴玉を取って口に入れた。
ちょっと羨ましいな、なんて思いつつ、俺もいただこうかと飴玉を一つ掌に乗せた。
瞬間、
「………仁王、俺ちょっとトイレ」 「は?」
「次、休むわ」
そう言うと、ダッシュで教室から出ていった彼の背中を見ながら、俺はブンちゃんの腹痛の原因が食べ過ぎであることを願った。
110919
(あれ、仁王一人?)
(おぉ幸村、ちょいとブンちゃんが腹を壊してな)
(なんだ、ブン太が食べちゃったんだ)
(え?)
(え?)
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