「仁王、お前何で昨日部活来なかったの?」
「ちょっと用事を思い出したので」
「へぇ、そうなんだ…
実はさ、俺が力使って探し出した娘が昨日の放課後ずっとお前と一緒にいたって言ってたんだけど、その娘がいないといけない用事だったのかな?」
「すみませんサボりました」
今まで、部活をサボっても何も言ってこなかった幸村が珍しく怒っている。
しかもご丁寧に力(魔王的な)まで使って裏付けまでとっている。
昨日って何か大切な試合でもあったかのー…
相変わらず真田も涙目な黒いオーラを放ちながら、ニッコニコとしている幸村を目の前に、すっごい考えた。
いや、考えても考えても昨日練習試合とかじゃなかったはずだ。
じゃあ……
「……やぎゅ」
「ようやく思い出した?」
「もしかしなくても、昨日部員で」
「誕生日パーティーしたよ」
ですよね〜
「でも、今朝柳生に会うたけど別に怒っとらんかった」
「バカか。それは柳生なりの優しさ。
アイツはね、お前に一番祝ってもらいたかったんだよ。
なのに雅治くんときたら…昨日の放課後は何をしてたんですかー?」
「女の子といちゃらぶ」
「しね」
「…幸村が言わせたナリ!」
「本当にさぁ、柳生の前で10回は死んできた方がいいよ。 ブン太もお前を埋めたいって言ってたし」
「酷いナリ!泣いちゃうぞ!」
「じゃあ泣いてからしね」
「…とりあえず柳生んとこ行ってくるぜよ」
「そうしなよ。まぁ、柳生のことだから笑顔で気にするなって言いそうだけど。
それで仁王が引き下がるなら俺はお前を……」
「行ってきます!!」
「はい、いってらっしゃ〜い」
こうして俺は柳生を探す旅に出た。
「真田、やぎゅーは?」
「さっきまでいたのだが…まあいずれ戻ってくるだろう」
「ブンちゃーん。柳生知ら「知らねぇよ白髪」
「参謀!柳生知らん?」
「さあな。俺は見ていない」
「ジャッカルくん、柳生見とらんかのー」
「あぁ、柳生なら屋上の方に行ったぜ」
「ジャッカル…!お前たまには役に立つな!」
「おい…怒るぞ」
「ありがとうな。助かったぜよ!」
かくして俺は屋上に続く扉の前まで来ていた。
(柳生にペテンは効かんからのー ここは素直に謝るか)
そう意を決して扉を思いっきり開けた。
「仁王くんのバカヤロー!!!」
「……え」
開け放たれた扉の向こうに見えたのは、空に向かって白昼堂々と人の悪口を叫ぶ柳生だった。
あの、全部聞こえてます。この似非紳士め。
「お、おや仁王くんではありませんか!どうされたんです、こんなところで」
俺の存在に気づいた柳生が慌てて話しかけてきた。
いや、もう全部聞こえてるから。
「柳生…その、昨日は」
「ききき昨日の事はお気になさらず!私はみなさんに祝っていただけて本当に幸せ者です」
「俺は祝っとらん」
「…ですから、その…仁王くんから祝っていただきたいなんて、私のわがままになりますから。
これ以上幸せになるなんて、贅沢すぎます」
少し寂しそうに笑って言っとる時点でアウトじゃろ。
紳士な自分を捨ててまで俺のことバカヤローだなんて叫ぶくらい、 本当は祝ってほしかったって、顔に書いてある。
「すまんな、遅れたけど…」
「え…」
「お前さん好きじゃろ?ところてん」
「はい……はい!大好きです!」
俺が差し出したところてんを嬉しそうに見つめる姿は、普段の紳士な柳生からは想像もつかない、中学生らしいものだった。
「誕生日、おめでとう」
その声が柳生に届いたか否かは分からないけど、紳士らしくない柳生のはしゃぎっぷりが微笑ましくて、しばらく眺めていた。
一番側にいてくれた、特別な君に
本当の君におめでとうを
111030
すごく遅刻したけど、柳生誕生日おめでとう!
これからも素敵紳士、変態紳士、残念紳士でいてください。
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