「あれって滝じゃね?」
たまたま一緒に帰っていた向日さんが道路の向こう側を指差した。
確かに、指が差している方向には滝さんの姿。
他校の色んな人が老け顔やら保護者やら言われているが、うちもおちおち他校のことを言ってられない。
あの人はナチュラルに大人だから。
歩いてる姿も、名前を呼ばれて気づいた姿も、こちらにかけよる姿も、何故か全て俺の目には大人に見えるのだ。
「日吉」
「はい、何ですか」
「俺の顔になんかついてる?」
「あ…いえ、滝さんって忍足さんより大人っぽいなと思って。
すみません」
「ぶっ!お前、侑士なんかを大人っぽいって思ってたのかよ!」
「まあ向日さんよりは」
「くそくそ!生意気な奴だぜ!」
「まあ、二人とも落ち着いて。 とりあえずどっか入らない?」
「じゃああそこのファミレスがいい!」
「ほらすぐファミレス。なんかあったらファミレスなところが子供っぽいんですよ。
滝さん、ファミレスなんかよりこっちの和菓子屋に…」
「……ははは!」
「なんで笑うんだよ!」
「なんで笑うんですか」
「あはは…いや、ごめん。 あんまりにも二人が似ててね、可笑しかったんだよ」
「似てるなんて心外です」
「それはこっちの台詞だ!」
「あ〜笑った笑った!
じゃああそこのカフェにでも行こうか」
そうやっていつも、結局は自分が行きたいとこに俺たちを連れていく、ちゃっかりさも大人のようにズルい。
「やっぱり滝さんは大人っぽいです」
向日さんの手を引いて案内している滝さんに、聞こえるようにそっと呟いた。
本当は違うよ
口パクで言ったその言葉に、俺はしばらく思考が停止した。
いつか、俺にその言葉が理解できる日が来るだろうか。
とにかく今は先に行ってしまった先輩二人を追いかけなくては。
111027
滝さんがすき
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