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好きになる、運命だったのかもしれない。 目の前で裾を握りしめ、耳まで真っ赤にして俯く財前の頭にそっと手を置いて、優しく撫でる。 俺はついさっき、彼に告白された。 財前は部活の後輩になる前から俺の行き着けの茶屋の常連だった。当時はまだ四天宝寺に転入する前だったから、まさか同じ中学で同じ部活に入るだなんて知らなかった。 でも、だからこそ財前も気難しそうな外見とは裏腹に、たくさん話してくれていた。学校にいる時よりずっと笑っていた。 そんな姿に俺はたちまち夢中になり、気づけばずっと財前を見ていた。 そして休日、たまに茶屋で会えばずっと二人きりで他愛もない話をして過ごしていた。 …そんな日常もきっと、今日で終わりなんだろうけど。 「あん時から、ずっとアンタの前でだけ本当の俺でおれたんや」 「そうやね…そんな気はしとったばい。 財前は強がりさんっちゃ」 撫でていた手を頬に下げて上を向かせる。 「真っ赤…」 「っ、誰のせいやと……ん」 今までにないくらい赤くなった顔に思わず笑ってしまったら、財前が怒ったので無理矢理口を塞いだ。 いきなりのキスに呆然とする彼の耳元でこっそりと囁く。 「………俺も財前のこと好いとうよ」 「千歳くん…!」 俺の気持ちを伝えた途端にぱぁっと明るくなった財前が愛しくて、痛いと嫌がるほど強く抱き締めた。 巡り合う (全部が全部、そうなる運命だったんだ) 120717 |