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向日さんはいつも俺に冷たい。 練習の時も、二人で帰る時も。 せっかく付き合ってるのに、甘い雰囲気になることだってなかなかない。 俺のこと本当に好きなんだろうか。 最近は気づいたらそればかりを考えてしまって、何にも手につかない。 宍戸さんや跡部さんにも怒られてばかりだし。 「…鳳」 「………あ、はい!」 「お前この頃ボーッとしてるよな」 「すみません…」 「いや、別に謝ることでもないけどさ」 今日も、いつもと同じように二人で帰っていたら、また俺は考え込んでしまっていたみたいで、俺のすぐ隣にいた向日さんが少し怒った口調で前を向いたまま声をかけてきた。 彼に気づかれないよう、本当に本当に小さなため息をつく。 ついに向日さんにまで言われてしまった… こうなったらもう、正直に聞くしかないんだろうか。 「あの…」 「なんだよ?」 「俺、向日さんに聞きたいことが…あるんですけど…」 身長差がかなりあるせいで、自然と向日さんが俺を見上げる態勢になるので上目遣いにちょっとドキッとする。 「む、向日さんて…俺のこと本当に好き、ですか?」 立ち止まり、意を決して聞いてみる。 俺の言葉に少し前で立ち止まった彼にいつまでたっても反応がない。 ずっと前を見たまま振り返る様子もない向日さんの背中に俺の不安はどんどん大きくなった。 「……んで、」 「え?」 「なんでそんなこと聞くんだよ!」 「うわっ」 振り向いた向日さんが泣きそうな顔をして、俺に飛び付いてきた。 いきなりのことだったので、少しバランスを崩したがどうにか立っていられた。 「俺だってこんな、付き合うとか初めてだし、どうしていいのか分かんないのに、なんで…!」 「向日さん……」 俺にしがみついてワンワン泣き始めた彼をそっと抱き締める。 なんだ、不安だったのは俺だけじゃなかったんだ… 「向日さん、泣かないでください」 「う゛〜っ、無理だ、ばかぁ!」 「俺も、不安だったんです。だから、向日さんの気持ちも知らずにあんなこと聞いてごめんなさい」 「…、俺は鳳が好きだ」 「はい、俺も向日さんが好きです。だから、二人でゆっくりやっていきましょう。焦ることなんてないんです」 「そんなこと、わかってるっての!」 そう言って鼻水をズズッと吸った後、太陽みたいな彼の笑顔が俺の心を照らしてくれた。 確かめる (心配ないよ。大好きだから) 120714 |