恋する動詞111題 | ナノ

59.惹かれる(柳ブン)



「……………」



幸村くんから真田のロッカーの上にある段ボールの中に、ヘアバンドのスペアがあるから取ってこいという指令を受け、部室に入って真田のロッカーの前に立ったはいいものの……届かねえ。

もしかして幸村くん、俺をからかうために頼んだのかも。だからと言って、文句の一つも言えないけど。


ていうか、そこら辺に踏み台になりそうな物もない。

けど手ぶらで戻ったら絶対笑われるし…それだけは避けたい。




「…………黙っていても、取れないものは取れないぞ」

「うわっ!?」


突然後ろから声がしたので肩がビクッと跳ねる。


「んだ、柳かよい…」

「段ボールに手が届かないから立ち尽くしていた確率、100%」

「100!?」


どうやら柳には全部分かっているらしい。

でも柳に頼むのもなんか嫌だ。


「取ってやろうか?」

「結構デス」

「だろうな」

「ならば、これはどうだろうか」

「な…っ」


いきなり足が地面から離れた…っていうか柳が俺を抱えた。

体重がアレなはずなのに、何でこんな軽々と抱えちゃってるんだよ。

「あの、柳…さん」

「自分の手で取りたいんだろう?さあ、取れ」


いつもの調子で言うもんだから俺も何故か大人しく段ボールに手を伸ばし、中をガサガサと探ってヘアバンドを取り出した。


「取れたようだな」

「ん、ああ。もういいぜ…」

「…………丸井」

「は?何だよ…って、ちょっ!」

「少し黙っていろ」


やっと下ろしてもらえたと思ったのもつかの間。そのまま柳に後ろからホールドされてしまった。
コイツ、細く見えるのにめちゃくちゃ力強いんだけど。


「丸井」

「う、わ…」


耳元で名前を呼ばれて思わず目をギュッと瞑る。何だよこれ、ちょっとドキドキする…


「お前……」


密着しているので背中から柳の心臓の鼓動が直に伝わってくる。

どんどん顔が赤くなって、柳の腕に抵抗して掴んだ掌には少し汗が滲んできた。


「やな…ぎ」

「また太っただろう」

「…………」





「ふっ…期待、したか?」

「し、してねーよ!!」

「それにしては、耳まで真っ赤だが」

「………いいからもう離せよ」

「断る…なんて言ったら、困るか?」

「…っ!」



ちょっとだけ後ろを振り向いたら、意地悪く笑う柳がいて、更に顔が赤くなった気がした。



惹かれる
(君だけに、)



120612


home




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -