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この時期になると、中学三年生は途端に勉学に励まないといけなくなる。 もちろん、俺と謙也も例外じゃない。 だけど、お互いどうしても勉強する気になれないのはきっと、志望校が違うから。 「お前とこんな風にしとられんのも、あとちょっとか」 いつもの様に人気のない公園で放課後デートしている時だった。 隣でさっきまで肉まんを食べていた謙也が不意にそんなことを呟いた。 びっくりして横を向けば、寂しげに俯く恋人の横顔。 そんなの、俺だって薄々感づいていたけど口に出しはしなかった。 一度口に出してしまえば、終わってしまうその時まで、すぐな気がしたから…と、そうやって俺が今まで堪えてきた言葉をコイツは言ってしまったのだ。 「あっと言う間やったな、三年間」 「せやな…俺は謙也と付き合うてからは一層、時間が経つの早かったで」 「ほーか…それはアレやな…嬉しいな」 …は? コイツは何を言っているんだ? しかも何でこんな照れてるんだ。 もう二人で一緒にのんびりと出来る時間は少ないのに、それを目の当たりにして何でこんな優しく笑ってるんだ。 「俺と一緒におったら、時間経つの早いっちゅーことは"楽しかった"ってことやろ?」 「…まあ、確かに」 「せやから、俺はユウジが楽しかったって言うてくれたみたいで、嬉しかってん!」 「…………っ」 最上級の謙也スマイルをいただき、不覚にもドキッとした。何やねんコイツ。天使か。 寒さでかは分からないけど、熱が顔に集まってくる感じに何だか恥ずかしくなって、でもそれ以上に嬉しくって。 カーディガンからちょっとだけはみ出している謙也の手を握って、冷えきったそれを温める様に指を絡めた。 絡める (もう俺から離れられないように) 120611 なんという季節外れなお話… |