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頭から足の先まで電流が流れたように、ソレは始まった。 「ん、はぁ…ひよ」 「ちょっと、黙っててください」 いつの間にやら、考えるより先に行動していた自分に驚く。 以前なら考えられない。 何を思ったのか、俺は夢中で忍足さんにキスをしていた。 何故こんなことになったのか。 思い返せば、着替えようとしていた俺の脇を指でなぞったことが原因かもしれない。 俺がその動作に声をあげたら、楽しそうに笑う忍足さんを見てイラついて………それから、今に至る。 「な、なんやねん自分!」 「…案外馴れてないんですね、キス」 「まず最初に謝らんかい!」 「ごめんごめん」 「適当すぎや。もっと誠心誠意込めて」 やいやい言い始めた忍足さんを軽くあしらいながら、自分がどうして急にキスなんかしてしまったのかをよく考える。 好きでもない、しかも男にどうして。 「なあ日吉」 「何ですか?」 「自分もしかして、俺のこと好きなん?」 「いいえ」 「え!?」 「何をそんなに驚いてるんですか」 「だって、キスしてきたからてっきり…」 「あー…じゃあそうかもしれませんね」 それっきり忍足さんは黙った。 俺は元々お喋りじゃないし、こんな状況でペラペラ喋る様なお調子者でもない。 だから彼が黙ってしまえば、自然と沈黙が続く訳で。 「…………」 「…………」 「…………」 「………っ」 忍足さんはしばらく俺の顔を見つめてから、急にカッと顔が赤くなった。 「忍足さ」 「俺は!!」 「…はい」 「俺は、日吉んこと好きやで!」 一瞬何を言われたのか全く分からなくなり、声が出なかった。 その一瞬を見逃さなかった天才は俺が何か言う前に、部室から去っていった。 …このざわついているこの気持ちは、一体何なのだろうか。 さっきまで彼の唇を貪っていた自分の唇に指をソッとあてた。 疼く (唇が熱いのは、きっと彼の体温が移ったから) 120610 |