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※中1設定 「ずっと思っていたことがある」 入学して半年が経ち、部活にもやっと馴れてきた…という頃。 同じ部員である真田にこんな気になる一言を言われた。 彼は幸村同様、なかなかのテニスの腕の持ち主で、俺も一目置いている存在。 「ああ、是非言ってくれ」 そんな彼からの言葉に俺も動じることなく答えた。 焦らされるのは、あまり得意ではない。言いたいことがあるなら、ハッキリと言ってほしい。 「ならば、遠慮なく言わせてもらおう」 真っ直ぐ俺を見てから、いきなり真田が手首を掴んできた。 ………データ不足だろうか。 全く真田の行動が読めない。 「…何だろうか」 「…柳、お前は試合が怖いか?」 「は?」 突然何を言い出すのかと思いきや、この俺が試合を怖がっているなど、そんなことを言いたいのかこの老け顔は。 「生憎、俺は今までにそういった感情は持ち合わせたことはない」 「そう思っているのはお前だけだ」 どうやら、余程自信があるらしく真田はキッパリと言った。 何故俺でもないお前が言い切れるんだ…。 「先週の練習試合でお前の手が震えていたのを目にした」 「…?」 「自分では気づいていない様だな」 「何を言っている。他でもない俺が否定しているんだ。そんなハッタリ、誰が信じると…?」 真田が、敵、ましてや仲間に嘘を吐くような人間ではないことぐらい知っている。だが、あまりにも信憑性に欠けている。 このまま、互いに譲らないで話しが長引くことは安易に予想がついたので、その場に真田を残して練習に戻った。 そして、それから1週間後の練習試合。 俺はまた試合に出ることになっていたので、いつもの様に相手のデータを取り、勝利を我が手にする準備をしていた。 前の試合は真田が出ていたので、ついでに彼のデータもとっておこう。 まあ…このまま順調に進めば勝てるだろう。 少しだけとれたデータをノートに記した後、しばらく対戦相手用のノートを見ていたら、ふと真田に言われたことを思い出す。 咄嗟にノートを持つ手を見てみれば、震えてなどいなかった。 (真田、やはりお前の見間違いだろう) パチパチと聞こえてきた拍手の嵐に顔を上げれば、やはり勝った彼の姿を確認し、自分のラケットを握る。 戻ってきた真田に「お疲れ」と一言声をかけてコートに向かおうとしたら、すれ違いざまに右手を掴まれた。 またか、と思って少し睨む。 「………何だ」 「やはり、怖いのか?」 まだそんな戯言を…と思って振り払おうとした俺の目に飛び込んできたのは、確かに微かだが震えている自分の手だった。 「なっ……」 「しっかりせんか、柳」 「さ、なだ…」 「大丈夫だ。お前なら、勝てる」 ゴツゴツした真田の手に強く握られ、気がづいたら俺の震えは止まっていた。 握りしめる (気づいてくれて、ありがとう。) 120526 もっと話を広げたかったけど、時間がなかったのでここで終了…´` |