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星が見に行きたいだなんて、珍しいことを言うもんだと思ったら、白石に流れ星が消えるまでに三回願い事が言えたら、その願いが叶う…と教えてもらったらしい。 ていうか金太郎、今まで知らんかったんやな…。 「じゃあ、今日の8時に土手集合な?」 「わかったー!待っとるでー」 もっと千歳や小春みたいに、面倒見のいい人がいただろうに… 本当に、何で俺なんかを。 そう思ってしまうのは、先週こいつから 『健ちゃんのこと好きや!』 なんて言われたから。 初めは先輩とか友達として好きだと言っているのかと思っていたが、実はそうではなかったらしい。 『健坊は金ちゃんが何でお前だけに好きやなんて言ったか、分かっとんのか。あの子はなぁ、恋してんねや、お前に。 好きで好きでたまらんくて、言うたんや』 『いやいや、それはない』 『あるからわざわざ、気づいてない健坊に教えに来たんや!このドアホ!』 何故か怒り気味の謙也からそう伝えられたのは3日前のこと。 マシンガンの如くすごい勢いで言われてしまい、あの時は圧倒されて何も言えなかったが、俺は男だ。 逆ならまだしも、金太郎…俺はどっからどう見ても女子と違うやろ…! (でも…好かれるのは、案外嫌やない…なぁ) いけない、こんなことを考えていては金太郎に示しがつかない。 今日ちゃんと、俺は男でお前が好きになるべき相手は女子なのだと、教えてあげないと。 普段こんなに使わない頭をフル稼動して、家につくまでずっと悩んだ。 そして約束の時間。 シュミレーションは何回もした。大丈夫だ。 ドキドキしながら集合場所に行くと、そこにはもう彼の姿があった。 春って言ってもまだ夜は寒いのにタンクトップでよくおれるな、あいつ。風邪引いたらどないすんね……いやいや、落ち着け。そうじゃないだろう俺。 「あ、健ちゃん!」 こちらに気づいた金太郎が大きな声で俺の名前を呼んだ。全く、人の気も知らないで… 「もう流れ星見れたか?」 「ううん、まだ」 「…流れ星に、何お願いすんねん」 「えっとなぁ、たこ焼きたくさん食べれますように!と、もっと強い奴とテニスできますように!とか〜…」 夜空を見上げながらいくつかあるらしい願い事を挙げていく。 「あとな」 「………」 「健ちゃんと、ずっと一緒にいられますように」 いつもと違う声と、表情に俺の思考は一時停止した。 そしてみるみる顔が赤くなるのが分かった。 (何やねん。何やねん…こいつ。ほんま人の気も知らんと) 「なぁなぁ。健ちゃんは?健ちゃんは何お願いするんー?」 何故か至極嬉しそうに聞いてきた彼の耳元にそっと、彼にしか聞こえないくらいの大きさで囁いた。 『金太郎の願いが叶いますように。ていうか、俺が叶えたる』 星に願わなくても、これからいくらでも、俺が叶えたるわ。 祈る (これからも、きっと。ずっと隣にいる。) 120325 全く祈ってない件について。 |