31.隠す(春ユウ) | |
『何でユウくんはウチが好きなん?』 いつだったか、そんな質問を投げ掛けたことがあった。 どんな答えが返ってくるかなんて全く想像していなかった。 けど、どんな答えだってウチの気持ちはずっと前から決まってる。 これからもずっとその気持ちだけは揺るがないと思う。 「……でな、相手がこう来ると。 そしたら……小春?」 「…あぁ、ごめんねぇ。ボーッとしとったわ」 「珍しいな、熱でもあるんとちゃう?」 「おおきに。大丈夫やで」 心配そうに覗き込んでくるユウくんに笑いかける。 ウチをこないに心配してくれるんも、アンタだけやわ。 せやからそんなユウくんをこれからも、大切にしたい。 「ちょっと、昔のこと思い出しとって…懐かしかったわあ」 「昔…?」 「ユウくんに、何でウチが好きなん〜?って聞いた時のこと」 それを聞いた瞬間、ピタッと動きが止まった彼に改めてちゃんと向き合う。 あの時 『小春は俺に持っとらんものを持っとるから、最初は羨ましくて仕方なかった。 けど…だんだん尊敬するようになって好きになっとった。 なあ、小春はほんまに俺が嫌いなんか?』 って、いつになく真剣な顔で聞いてくるもんだから呆気にとられて、ウチはちゃんと返事ができんかった。 だから少し遅くなったけど、今から返事させてほしい…そんなウチの気持ちが、ちゃんとユウくんに伝わったらしい。 「ウチな、考えたんやけど…」 「すまん小春、ちょっと待って…ごめん」 まだウチは何にも言ってないのに、もう泣きそうな顔して…ほんまにユウくんには敵わんわ。 「ウチはユウくんと、お付き合いはできひん」 「…うん」 「何でか、わかる?」 「わからん」 「…男だからとかやなくて、ユウくんがウチを好きな気持ちはきっと恋じゃないから」 「ちゃう…俺、小春のことちゃんと好きやで」 「せやからそれは、憧れとか尊敬。その気持ちがたまたま他の人より強かっただけなんや」 「…そんなことない。うっ…」 「自分でも、もう気づいとるよね?」 とうとう泣き出してしまったユウくんの背中を擦りながら、自分の身体の奥が締め付けられるような感覚に耐える。 「ウチ、ユウくんとは恋人になれんでも一番の友達にはなれると思うんよ」 「とも、だち?」 「せや。親友になってほしいんやけど、あかん?」 まだ目に涙を浮かべた顔をパッと上げた彼に、訊ねる。 明るくてウチの大好きなユウくんの笑顔が勢いよく縦に振られた。 その時、一粒だけ涙が頬を伝ったような気がした。 知ってしまったから、気づいてほしかった。 ウチのこと本当に好きなんじゃないって。 けれどもうウチはユウくんが好きやった。 好きだったから尚更、幸せになってもらいたいから、辛いのは今だけだから。 どうかいつか最高に幸せな君の姿が見れますように。 隠す (君に気づかれないよう、ずっと仕舞っておくね) 120228 |