30.重ねる(滝日) | |
好きって、どんな気持ちなんだろう。 俺が滝さんに抱いているこの感情は恋愛云々の好きなのだろうか。 「………」 休憩中、ベンチに腰掛けて考えてみる。 周りを見渡したが、今日滝さんはいないらしい。 心の中で少し残念に思う辺りやはり俺は滝さんが好きなのかもしれない。 「ね、誰を探してたの?」 「…、滝さん」 前屈みになっていた俺の背中に悩みの種である彼が声をかけてきた。あまりにいきなりだったので声がちょっと裏返った。 は…恥ずかしい。 「誰も探してなんていませんけど…」 「そうかな?俺には探してるように見えたんだけど」 くそっ、見られていたのか… 恥ずかしいからシラをきろう。 滝さんは相変わらずの穏やかな表情で俺の隣に腰を下ろした。 「気のせいじゃ、ないですか?」 「うーん…日吉がそういうなら、俺の気のせいかも。 でも」 もし俺を探してくれてたなら嬉しいよ。 彼の口がそう動いたのを頭のどこかで認識したと同時に、唇に一瞬だけ生暖かい感触がした。 それがキスなのだと気づいた時にはとっくに滝さんは跡部さんの所へ行っていた。 (何なんだ……) だんだん熱を持っていく頬を気にしながら、重なった唇を手で覆った。 重ねる (いつかちゃんと、気持ちが重なりますように) 120226 |