28.溶け合う(光謙) | |
「なんでやねん」 ここ特有の言葉が自然と出てきてしまった。 だってこの目の前の年下で生意気な恋人が、俺の誘いをいとも簡単に断ったからだ。 「ユウジ先輩から誘ってもらえたんはごっつ嬉しいんやけど、その日はどうしてもダメや。ごめん」 「……なら、仕方ないな」 デートなんて大概は財前からお誘いがあるので、俺から話を持ちかけるのはなかなかないのでとてつもなく緊張した。 …のに、まさかのノーか。 ふざけんな財前。俺の勇気を返せ! ちょっと悲しくて唇を尖らせたら珍しくフッと財前が笑って頭を撫でてきた。 「そないに落ち込まんでや。また別の日に行こう?」 「……うん」 ぎゅうっと抱きついたら無性に離れたくなくなって、更に腕に力を入れたら「痛い」って言われた。 そんなん、嘘や。 財前やって離れる気ないんやろ? 痛いなんて言いながら俺に負けじと、すごい力で抱き締めとるくらいやからな。 あーあ。 このまま一緒になってしまえばいいのに。 そしたら、寂しいだなんて思わないのに。 溶け合う (どうせなら、生きるのも死ぬのも一緒がいい) 120222 |