27.奪う(跡宍) | |
何もかもが揃っている俺から、アイツはまんまと大切なものを奪っていった。 生意気で、うるさくて、気にくわないとばかり思っていたのに、時間が経つと同時に努力家で、面倒見が良くて、気の利く奴なんだと思うようになった。 それは本当にごく自然なことで、自分でもその心情の変化に気づいたのも最近のことだ。 こんなにじわじわと、心が侵食されていくことが嫌じゃないなんて俺も随分女々しくなったもんだぜ。 「別に、返さなくてもいいからな」 誰もいなくなってしまった部室で唐突に声をかければ、案の定不思議な顔をした宍戸がこちらを見た。 「何か借りてたっけか?」 「いや、物じゃねぇ」 「はぁ?」 訳わかんねぇって顔をした宍戸に近づく。 「お前が俺から取っていったのと同じモン、お前から奪ってやっから覚悟しとけよ」 それから、何かを言おうとした宍戸の唇を無理矢理塞いだ。 奪う (君の心を、全てを。) 120220 宍戸には訳が全く分かっていません。 天然な宍戸が大好物なかまぼこ |