20.思い出す(幸赤) | |
『赤也』 先輩との試合に敗けて落ち込んでうずくまっていた時、頭上から急に声が聞こえた。 その声がいやに優しくて、堪えていた涙が出てしまいそうだった。 『ほら、』 少し顔を上げたらやっぱりそこには彼がいて、にこりと微笑んで手を差しのべてくれた。 『…やだっ』 『やだじゃないよ。 駄々こねないで。俺一応部長なんだから、お前連れて戻らないと面子立たないだろ?』 『俺は"部長"に来てほしいんじゃないんす。"幸村先輩"に来てほしいんです…!』 部長だから仕方なしに来てほしくなんかない。 『じゃあもういいや』 『えっ』 思ってもいなかった先輩の言葉にがばっと顔を上げれば、勢いよく顔を両手で押さえられた。 なんか若干痛いんですが!? 『部長じゃない俺…そんなに優しくないけど、それでもいいんだ?』 ジッと見つめてくる先輩の瞳から視線を逸らせることはもちろんできなくて、どれだけ真剣に言ってるのかが嫌でも分かる。 ずるいよ、先輩。 俺バカみたいに先輩のこと好きだから、どんな先輩でも結局は好きなんだよ。 『……はいっ』 頷いて手を取れば、ばーかなんて悪戯な笑顔で涙が零れそうな俺の目尻にそっとキスをしてくれた。 「あの時は死ぬほど優しかったくせに!」 「だって俺言ったじゃん。優しくないって」 「確かに良いって、良いって言ったっすよ!でもここまでとは思いませんでした!」 椅子に座っている先輩の足の間に挟まれ、オマケに後ろから抱き締められているミーティングなう。 目の前の先輩たちはめちゃくちゃ引いている。 真田副部長に関しては何故か顔を真っ赤にしている。 気持ち悪いって言うか、なんか見てるこっちが恥ずかしいんだけど! とりあえず今は顔から火が出て爆発しそうです。 思い出す (優しさと温もり) 111208 |